ご覧いただきありがとうございます、うこうこです。
毎年開催されているツナガリウォーク
障害のある人・ない人が”一緒に歩く”体験を通して、それぞれの違いや個性を認め理解し合う機会として、2015年から始まったイベントです。ヨコハマプロジェクトさんが主催しており、横浜の山下公園に集まる参集型のイベントですが、今年は名称を”ツナガリウィークエンド”としてオンラインでの開催となりました。
その中でも、9月27日に開催された
気づいていますか?きょうだいの気持ち
〜家族や医療関係者のためのきょうだい講座〜
を拝聴させていただきました。
このワークショップは、ブライアン・スコトコ(Brian Skotko)先生、スーザン・レヴァイン(Sue Levine)先生というアメリカにおけるダウン症の専門家である先生方の話をがリアルタイムで聞けるという、なんともすごい企画でした。
ブライアン先生は医師・研究者として専門的な見地に加え、ダウン症のきょうだい(妹さんがダウン症)としての立場から、スーザン先生はソーシャルワーカーとして、家族というシステムや社会システムとの関連性に基づく視点からのお話がとても勉強になりました。通訳の方を通して聞いていたのですが、お二人とも笑顔が素敵で、熱意と優しさの双方を感じられる先生でした。
ダウン症のきょうだいに向き合っていくために必要なこと
ワークショップでは、お二人の研究として、約5000弱の家庭に調査票を送付し、返答があった822回答を分析された研究の結果を紹介されていました。回収率が19%ということで回答されたサンプルに偏りがあることは否定できませんが、822のサンプル数はかなり多くのデータを扱かった研究といえます(このような統計的データをきちんと示されている点が大変好感を持てました)。
研究結果としては、ダウン症のきょうだいからあった実際の質問をカテゴリーにまとめたものが紹介されていました。その質問に対しての答えや質問の意図を考えていくことでどのようにしてきょうだいと向き合っていったら良いか、についてお話されていました。
そのお話がとても良かった!です。
そのため、うこうこの主観も入りますが、きょうだいに親として向き合うためのポイントについて、まとめてみました。
①きょうだいからの質問の背景を考えること
“全ての質問には意味があり、大事にされるべき” ということが基本的な姿勢となります。
『どうしてそんなことを聞くの?』『そんなこと心配しなくて良いのに』という質問もあるかもしれません。そういう時こそ、一旦立ち止まって考えることが大切です。きょうだいがそのような質問をするのは『何を考え感じているからか?』『何を気にしているのか?』『何が心配で不安なのか?』と質問の意図や背景を考えてあげることが大切です。
例えば、きょうだいから「弟(ダウン症の子)は何で話せないの?」と質問があったとします。ダウン症の子の発達の特徴から「頑張って覚えようとしてるんだけど、できるようになるまでに人より時間がかるんだよ」と答えるかもしれません。でも、もしかしたら、そのきょうだいは友人から「お前の弟、まだ話せないんだって。大丈夫なのか」とからかわれたのかもしれません。もしくは、弟が話せないのでそのきょうだいが代弁してくれていたけど次第に負担に感じるようになったのかもしれません。または、弟を思いやって将来が心配になったのかもしれません。
お二人の先生は “回答する前に、もっと情報が要るかどうか、自問してみてください” と説明されたいました。つまり、きょうだいからの質問の背景にある思いや考えに触れようとすること、そして、分からないことについては掘り下げて聞いていくことが重要です。
②ネガティブな感情や考えを持つことは当然である、という姿勢でいること
お二人の先生の研究では、ダウン症の子とそのきょうだいとの関係は、健常の子のきょうだいと比較して、思いやりがあり対立が少ない、行動上の問題が少ない傾向にある、共感性が高い、ことが分かっています。
一方で、きょうだいはダウン症の子に対して様々なネガティブな感情を抱えていることもあります。「あいつばっかり面倒見てもらってずるい」「何でいつも世話をしないといけないんだ」「僕(私)だって辛いのに」等々、きょうだいや家族の関係性や、保育園や学校等の社会的な集団の中での経験から様々なネガティブな感情を持つこともあります。
親としては『できればネガティブな感情を持たせたくない』という気持ちもあると思います。しかし、子どもは大人が想像する以上に、よく周りを見て感じ考えています。逆に、ネガティブな気持ちを持たせないようにと親が関わることで、子どもが親の気持ちを察し、『ネガティブな気持ちは持ってはいけないものなんだ、そういう気持ちを持っている僕(私)はいけないんだ』と自責的な感情を抱えることになってしまいます。そして、そのような気持ちは率直に表現することがとても難しいです。
以上のことから、大切なことは、”ネガティブな気持ちはあって当然、誰もが感じる気持ちであり、もっていてもいいものである“、という親の姿勢です。
そのような姿勢でいることで、きょうだいがネガティブな感情を吐き出しやすくなります。気持ちを表現してくれたら、まずは「そうなんだね。わかるよ」と共感を示してあげること。そして、「そういう気持ちになることはいけないことじゃない」と肯定してあげることが大切です。
日本では、子どもが転んだとき、痛くても「泣かない」「泣かなくて偉かった」という風潮が強く、ネガティブな感情表現が好ましくないとされる文化的背景があります。そのため、家族関係に過剰に適応している子も多く、そういう子は、自分の本心はなかなか表現できずにいます。きょうだいの声(質問)に耳を傾ける以前に、「思いや考えを表現しても良いんだよ」という雰囲気づくりがより重要です。そのためには、親がダウン症の子に対する思いや考えを伝えられる範囲で積極的にきょうだいに伝えること、もしくは、両親などで伝えあう姿を見せることが大切だと思います。
③心を開いて、そして正直にダウン症についてなるべく早く説明をすること
Be open and honest, explaining Down syndrome as early as possible.
この点は、重要なポイントとして何度も触れられていてとても印象に残りました。
年齢が低いうちから伝えていくことがポイントで、その方が理解が良いということです。最初は、ダウン症があることや、身体的な特徴(力が弱くてうまく座れない、等)だけでも良いです。将来のことについて不安になっているきょうだいには、将来のビジョンについて示してあげることで不安が低くなります。大人になったときの生活がどのようになる可能性があるか、社会的サポートや福祉的サポートとして具体的にどのような支援を受けることができるか、などを伝えてあげることも役に立ちます。
最後に
全体を通して、きょうだいもダウン症の子の将来のことや最も良い環境や関わりのことについても真剣に考えている。だからこそ、きょうだいもダウン症の子のことをよく理解している一人の存在として尊重してあげることが大切なんだと感じました。
親として、常にいつでも完璧にはできないし、後で振り返って「こういうふうに関わるんだった〜」と後悔することもあると思いますが、意識して関わり、振り返りながら積み重ねていくことが大切だと思いますので、できることからやっていきたいと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。