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【特別児童扶養手当】受給の地域格差はある? 〜都道府県ごとのデータを分析したら驚きの結果が!!〜

ご覧いただきありがとうございます、うこうこです。

特別児童扶養手当制度ですが、判定基準が明確でないことに加えて、都道府県ごとに判定するため、地域によっては受給できるかどうかの可否に差があると言われています。

そこで、今回は、省庁が公開している公的なデータを用いて分析をし、特別児童扶養手当(以下、特児)の受給の現状について、都道府県ごとに比較して見ていきたいと思います。そして、その結果から、地域での格差があるのかどうか考えていきたいと思います。

各都道府県における特児受給者数のデータを分析する

まず、2019年の子どもの数に対する、特児受給者の割合について都道府県ごとに計算してみました。次に、2013年から2019年までの特児受給者数の増減について都道府県ごとに計算してみました。

都道府県別の特児受給者数のデータは、厚生労働省が出している福祉行政報告例の統計情報を使用しました。また、都道府県別の子どもの数のデータは、総務省統計局が出している人口推計データを使用しました。

今回使用したデータの扱いについて注意する点がありますので詳細を以下にまとめます。ややこしいと思われる方は太字のところだけでも読んでいただければと思います。

総務省の子どもの数のデータは15歳未満の子どもの数であり、15歳以上の子どもの数は含まれていません。

それに対して、特児の対象年齢は20歳未満までなので、特児の受給者数のデータには15歳から19歳までの人数も含まれています。

そのため、データの解釈について、具体的な割合の数字自体に意味はなく、都道府県ごとに割合を比較する点において意味があるものと考えます。

というのも、15歳を超えてから特児を初めて申請する人はかなり少ないと思われます。身体障害・知的障害・精神障害(子どもの場合は主に発達障害)などの障害に関する状態像は、幼少期から学童期には顕在化していることがほとんであるからです。つまり、15歳を超えてから特児受給者数が大きく増加することは考えにくいと思われますので、比較するデータとして用いても大きな影響はないと判断して使用しています。

計算したものをまとめたのが以下の表になります。

2019年における特児対象者の都道府県別割合と受給者増加数

子どもの数(千人) 特児の支給対象障害児数 1000人あたりの支給対象者の数 2013年から2019年の間の受給者数の増減
北海道 565 12430 22.0 -1508
青森 133 3643 27.4 741
岩手 137 4407 32.2 761
宮城 272 4483 16.5 -233
秋田 95 2410 25.4 285
山形 123 2408 19.6 -334
福島 211 5893 27.9 1370
茨城 342 4578 13.4 321
栃木 235 3111 13.2 372
群馬 232 2884 12.4 117
埼玉 881 10581 12.0 1151
千葉 739 8667 11.7 200
東京 1553 10876 7.0 -565
神奈川 1099 15374 14.0 3217
新潟 254 4666 18.4 775
富山 119 1438 12.1 98
石川 140 1929 13.8 -85
福井 97 1481 15.3 133
山梨 95 1548 16.3 199
長野 250 7282 29.1 1912
岐阜 248 3451 13.9 -274
静岡 447 8606 19.3 1441
愛知 991 12650 12.8 2147
三重 218 4017 18.4 391
滋賀 195 2451 12.6 168
京都 299 7121 23.8 1643
大阪 1043 23596 22.6 5305
兵庫 674 15017 22.3 2116
奈良 158 4771 30.2 913
和歌山 107 2466 23.0 586
鳥取 70 1278 18.3 130
島根 83 1979 23.8 237
岡山 237 2629 11.1 69
広島 358 8110 22.7 2374
山口 158 3008 19.0 627
徳島 81 1227 15.1 -100
香川 117 1710 14.6 315
愛媛 159 3440 21.6 442
高知 77 1855 24.1 -112
福岡 670 12471 18.6 4373
佐賀 110 2325 21.1 472
長崎 168 3527 21.0 242
熊本 233 5824 25.0 2258
大分 139 2702 19.4 939
宮崎 143 2056 14.4 -440
鹿児島 213 2800 13.1 122
沖縄 245 8343 34.1 3054

政令指定都市のデータは在地する都道府県のデータに含めました。

細かく見ていくと大変興味深いデータになっていますので、解説しながら見ていきたいと思います。

各都道府県の子どもの数における特児受給者の割合について

表の右から2番目の数字が、子ども1000人に対して特児を受給している子どもの割合を表しています。数字が大きければそれだけ特児を受給している子どもが多いことを示しています。

結果について見てみると、都道府県でばらつきが大きいことが分かります。「地域によって格差がある」といわれていますが、データからもそのことを裏付ける結果となっています。

全体を見てみると、都道府県ごとのばらつきも大きいのですが、地域での傾向も見てとれます。関西圏から九州圏は、割合の数字が高いところが多くなっています。特に関西の中心部(大阪、京都など)は揃って高い傾向にあります。

逆に、関東圏は全体的に低い数字となっています。特に、日本の中心で子どもの数も全国で一番多い東京都が全国で一番低い結果となっているのには驚きました。数字的にもかなり低い数字になっています。

割合が高いから「良い都道府県である」、低いから「悪い都道府県である」とは一概に言えないところに注意が必要です。判定の基準が明確でないため、適切な割合がどの程度なのかの基準もありません。また、特児のお金は国から全額支給されるため、都道府県の財政状況の影響ではなく、ケチだからというわけでもありません。

2013年から2019年までの特児受給者数の変化について

一番右の数字が、2013年から2019年までの間で、特児受給者の人数がどのくらい変化したのかを表しています。この間、東京都以外の全ての都道府県で子どもの数は減少していますので、全体的に受給者数は減少してもおかしくないのですが、全国で、この7年間で38000人ほど増えています。

先日(2021.8.29)に、「特別児童扶養手当で、自治体に申請しても”障害が基準より軽い”として却下される件数が2019年度までの10年間で3倍近く増えていたことが29日、国の統計データから分かった」とのニュースがありました。東京新聞の記事はこちら

注意すべきポイントは、特児の申請が却下される数が増えて受給できる人が減っているわけではなく、むしろ受給者は年々増えている状況だということです。申請数も増えて却下件数もそれに伴い増えていますが、支給されている数も増えているのです。

子どもの数が減ってきている中でも受給者が増えている状況ですが、その内訳を見てみると、身体障害での受給者は減少している中、精神障害の受給者が5万人ほど大きく増加しています。この精神障害の多くは、ASDやADHDなどの発達障害の子どもたちだと想定されます。受給者数の増加は、申請が通りやすくなってきている面もあるかもしれませんが、発達障害を中心とした精神障害の子どもが特児の対象として判定されることが増えているためと考えられます。

前述した子どもの数に対する受給者数の割合が高く、ここ最近の受給者数の増加も多いのが、青森県、岩手県、福島県、長野県、奈良県、熊本県、沖縄県となっています。これらの都道府県は、子どもの数に対する特児受給者の割合が多く、しかも、受給する人の数も増えている状況にあるといえます。

受給者数の増加で目立つのは、神奈川県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県、福岡県となっています。ここでも、関西圏の受給者数の伸びが目立つ一方で、関東圏は他の都道府県と比較しても増加の幅が少ないといえます。その中でも、東京都は、子どもの人口が増えているのに関わらず受給者数は減っています。前述にあるように、受給者数の割合も全国で一番低かったことからも、特児を取得するには他の都道府県と比べてかなり厳しい状況にあると推察されます。

また、受給者数が大きく減少しているのが北海道ですが、子ども数に対する受給者数の割合は決して低くはなく、どちらかというと高い方です。北海道は子どもの減少率が全国トップクラスで、しかも何年も続いていたりします。そのため、子どもの数が大きく減っているために、受給者数も大きく減っていると考えられます。

※追記 2021.12

「所得制限の影響もあるのではないか?」「東京が受給者数が少ないのは所得制限によって受給できないためではないか?」とのご意見をいただきました。

都道府県別の年間収入のランキング(厚生労働省『賃金構造基本統計調査』)を用いて比較してみると、収入が多い自治体では、特児受給者の割合が少ない傾向がいくつかみられました。つまり、都道府県別の収入の要因を考慮する必要があると考えられます。関東圏(特に東京)が全体的に受給者数の割合が低いのは、収入の額が高いことで所得の制限に引っかかり受給できない人も多いことが考えられます。

ただ、収入が多い自治体でも受給者数が多いところがあったり(大阪や京都など)、同程度の水準の自治体でも受給者数やその増減に差が見られるところもあったり(大分と宮崎など)と、関係性が当てはまらない自治体もあるのも現状です。

以上より、

  • 自治体ごとの収入が受給者数に影響していることは考えられる
  • しかし、自治体ごとの受給者数のばらつきは収入額の違いだけでは説明できない

と考えられます。さまざまな要因を考慮してデータを詳しく見ていく必要があると感じます。

ご意見いただきました方、本当にありがとうございました。

まとめ

以上より

都道府県や地域によって、受給者数の偏りがある

=地域格差が存在している

と考えられるのではないかと思います。

では、どうしてそうなっているのか?というと、判定の仕組みが大きな原因だと考えられます。そのことについて詳しい内容は以下の記事にまとめてありますのでそちらを参考にしてください。

特別児童扶養手当制度の概要と問題点 〜必要な人が受給するためのポイントを解説〜ご覧いただきありがとうございます、うこうこです。 今回は、特別児童扶養手当制度について解説します。 制度の概要についてはネッ...

また、そちらの記事では触れていませんが、特別児童扶養手当が20歳未満までの子どもを対象としていますが、20歳以上になったときに障害年金に移行していくことを想定した制度設計がされている点も重要なポイントです。

H29年度 特別児童扶養手当制度等の概要   厚生労働省

このような理解のもとに、将来像を見立て、保護者と共有を図った上で、申請をしていくのが正しい制度利用であると思います。地域格差がある背景や、申請数と却下数が増加している背景には、この点の認識が曖昧になってしまっていることも影響しているのではないかと思います。

療育手帳制度と同様に、判定基準の偏りや不明確さが課題であり、それが浮き彫りになってきていると思います。療育手帳制度は改正していく動きも出ていますが、特児制度はどうなっていくのでしょうか?基準を明確にしていくにしても、どのレベルでその程度を基準に設定するのか、その基準をどうやって評価するのか、がとても難しいと思います。

そのようなことを常に考えながらも今後の動向に注目していきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

この記事を最後までご覧いただきありがとうございます。

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