ご覧いただきありがとうございます、うこうこです。
「ダウン症の人は不器用である」「ダウン症の人は手が小さいから器用じゃない」と言われることがよくありますが、実はそれは違うことが指摘されてきています。
鉛筆で上手に書けない、道具を上手く使えない、雑巾を絞れない等々、ダウン症の人の不器用さの特徴として挙げられますが、これらは握力が弱いことでも生じる特徴です。
臨床遺伝専門医で多くのダウン症を診ておられる長谷川知子先生の著書「ダウン症神話から自由になれば子育てをもっと楽しめる」では、
ダウン症の人とちは指づかいが器用なのに握力が弱いことが多く、それが不利になっています。(一部省略)体幹の筋トレと一緒に握力をつけてください。
と、ダウン症の人でも器用な人はたくさんいること、ダウン症が不器用と誤解される背景に握力の弱さがあること、幼少期より意識して握力を鍛えるのが重要であること、を述べられています。
以上のことを踏まえて今回の記事では、ダウン症の子どもが握力を鍛える重要なメリットと実際の鍛え方についてまとめてみます。
握力の基本的な理解
握力は大きく3つの力に関わります。
- 手の巧緻性(こうちせい:手先や指先を上手に使う)の力
- 運動の基礎的な力
- 大きな怪我の予防する力
握力は、書く・作るなどの手を使った動作や、マット・跳び箱・鉄棒などの器械運動や、ボールを投げる・道具を持って使う等のスポーツ全般の基本動作をこなすことに関わります。また、転びそうになったときに手すり等につかまって体を支えたり、転んだときに手で体を支えて衝撃を和らげたりと、大きな怪我の予防にも握力は関係します。
つまり、手を使う動作を効率よくこなすことや、運動を楽しく安全に行うために必要な力のひとつが握力なのです。
握力に関する研究から見えるダウン症との関連性
NHK「ためしてガッテン!意外な寿命バロメーター!握力で死亡リスクがわかっちゃう!?」では、日本の久山町研究を取り上げ、握力が弱いと様々な病気での死亡リスクが増加することや、握力が全身の筋肉量を反映する指標であることを紹介しています。
また、世界5大医学雑誌のひとつである「ランセット」に掲載されたカナダの研究では、握力が落ちるほど心臓に関する病気での死亡率が上がることを示しています。
さらに、国立長寿医療研究センター等の研究では、握力が弱いと認知症になるリスクが上がることを示しています。
これらの研究結果をまとめると、
- 握力は全身の筋肉量と関連する
- 握力が弱い人の死亡リスクが増加するのが65歳以上である
- 握力が弱いと心臓に関する病気の死亡リスクが上がる
- 握力が弱いと認知症になるリスクが上がる
となります。
ここでダウン症の人の特徴を挙げてみると、
- 全身の筋力が弱い
- 平均寿命は約60歳である
- 心臓の合併症などのリスクが高い
- 認知症になりやすい
そして、ダウン症の人は握力が弱い…
不思議なほど関連する要素が多くないですか??
明確なつながりは解明されていませんが、もしかしたら“ダウン症の人は握力を鍛えることで、ダウン症の特徴とされる病気の予防につながる?”かもしれません。ダウン症で長寿な方の握力についての研究とかあると良いんですけどね〜(あったら教えてください><)。
握力を鍛えるメリット 〜ダウン症に重要な○○力との関係〜
長谷川先生が指摘されているように、ダウン症は握力が弱いことを指摘している研究は他にもあります。日本や海外の研究では、健常な人と比較してダウン症の人は握力が弱いことを示しています。
また、一般の幼児を対象に握力と身体機能との関係を調べた研究によると、幼児の握力は、かむ力と上体を支持する力と関連することが指摘されています。つまり、握力が強ければかむ力や上体のバランス力が強くなるということです。
そして、これらのかむ力と上体のバランス力はダウン症の子どもにとって重要な力です。
ダウン症の子どもは、筋力が弱く、かむ力も弱いため、飲み込むことが中心な食事になり肥満になりやすいといわれています。また、歩行に関連する動作において不安定になりやすいこともいわれています。つかまり立ちや伝い歩き、そして歩行には下半身の力だけじではなく、上体を大きくブレずに保つ力(=バランス力)が必要です。
以上のことから、握力を鍛えることが、かむ力や上体のバランス力を鍛えることにつながり、それはダウン症の子どもにとって肥満予防や歩行の安定につながると考えられます。
握力の鍛え方
最後に、ダウン症の子どもの握力をどのように鍛えていったらよいかについてまとめてみます。
もっとも重要なポイントは遊びの中で楽しみながら鍛えることです。遊びの中で握力を使う要素をいかに取り入れ、楽しみながらできるかが重要です。
長谷川先生は著書の中で、坂道ハイハイや棒をつかんでぶら下がる遊びを推奨されています。
ダウン症神話から自由になれば子育てをもっと楽しめる 長谷川知子 著 P97より
発達の段階に応じて、学童期の子は、鉄棒や雲梯(うんてい)、ボルダリング、アスレチックなども良いと思います。
ちなみに、うちのダウン症おーくんが取り入れているのはこちら
滑り台とブランコを外すと鉄棒になる室内用のジャングルジムです。
長谷川先生がお薦めしている、坂登りと鉄棒ぶら下がりのどちらもできます。以前、伝い歩きや歩行を習得するために取り組んでいることをまとめた記事でも紹介しましたが、歩行獲得の練習にも使えます。
その他として、細かい動きが好きな子は、キャップの開け閉めやフタの開け閉めも良いと思います。手全体(もしくは指先)で掴んだ上でプラスの動作(回す、ねじる、引っ張る、離す等)を加えることで握力を使うことになりますので、そのような手の使い方ができる玩具を取り入れながら遊ぶのも握力を鍛えるのに役立ちます。
まとめ
要点まとめ
今回の記事をまとめてみて、歩行練習で歩くことに視点が行きがちだったことに気づきました。歩行の安定や転倒時のケガ予防には握力が重要であることを知ったので、歩くだけではなく握力を使う遊びも意識して一緒に楽しんでいきたいと思います。
ダウン症のことについて僕自身がまだまだ知らないことがたくさんありますので、調べて分かったことを発信していきたいと思いますので、一緒に学んで共有していけたらと思います。
今回の記事でも紹介した長谷川先生の著書はこちらです↓
こちらの記事で本のレビューを紹介していますので、よければ覗いてみてください。
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