ご覧いただきありがとうございます、うこうこです。
以前、このブログでは、ダウン症とコロナウイルスとの関連について、海外の研究を記事にまとめました。
それらの研究はいづれも変異株が広がる前のデータになります。そのため、ワクチン接種する前のデータとなり、ワクチン接種が普及した現状に当てはまらない可能性があります。
そこで、今回取り上げるのは、イギリスの前向きコホート研究です。ワクチン接種後の成人を2021年6月までの6ヶ月の間を追跡した研究です。ワクチン接種後の重症化リスクについて分析している研究であるため、現状において大変参考になる研究であるといえます。
その研究の中で、ダウン症の人に関して重要な結果が指摘されていましたので、その点についてまとめてみます。
イギリスの大規模研究より
現在イギリスは、オミクロン株の流行もあり、1日の感染者数が20万人を超える日があり、深刻な状況が続いています。
イギリスは、コロナウイルスに関するデータ収集と分析を以前から力を入れて行ってきています(上述の過去記事の研究もイギリスの研究です)。今回紹介する研究も、1回または2回のワクチン接種を受けた成人約700万人(19〜100歳)を対象としており、かなり大規模なデータを扱っています。
ワクチン接種後においてもどのような属性や疾患がある人への対応を重視するべきかを明らかにするだけでなく、妥当性のあるデータを収集し国策に活かしていくという国全体としてコロナと戦っていく意識の高さが感じられる研究であるともいえます。
研究結果の概要
研究データの概要について簡単にまとめておきます。
- ワクチン接種した700万人のデータのうち、74.1%に人がワクチンを2回接種していた。
- ワクチン接種後の2031人が死亡した。
- ワクチン接種を2回すると死亡リスクが83%低下した。
- 1929人が入院し、入院した人の23.1%が死亡した。
- 死亡の93%以上と入院の75%以上が70歳以上の人で起きたのに対し、50歳未満の人では死亡が0~4%、入院が7%であった。
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死亡率は,年齢の高さ、貧困度合い,男性,インドおよびパキスタンの民族的出身で上昇した.
参考・引用
・Hippisley-Cox J, Coupland CA, Mehta N, et al. Risk prediction of COVID-19 related death and hospital admission in adults after COVID-19 vaccination: national prospective cohort study. BMJ 2021; 374: n2244.
・McIntyre, P. B., Aggarwal, R., Jani, I., Jawad, J., Kochhar, S., MacDonald, N., … & Cravioto, A. (2021). COVID-19 vaccine strategies must focus on severe disease and global equity. The Lancet.
ダウン症成人の重症化リスクはどうなのか?
ワクチンを1回または2回摂接種したダウン症の成人ではどうだったのか?についてみていきます。
ワクチン接種後の死亡リスクについてですが、ダウン症成人の死亡リスクは非常に高いことが示されました。
相対的な危険度を表すハザード比でみてみると、「ダウン症(12.7倍),腎移植(8.1倍),鎌状赤血球症(7.7倍),ケアホーム居住(4.1倍),化学療法(4.3倍),HIV/AIDS(3.3倍)、肝硬変(3.0倍)、神経症状(2.6倍)、最近の骨髄移植または固形臓器移植の経験(2.5倍)、認知症(2.2倍)、パーキンソン病(2.2倍)」となっています。
コロナ重症化のリスクとしてよく言われている、慢性閉塞性肺疾患(1.5倍)や、冠状動脈性心臓病(1.2倍)がそれぞれ、1.5倍と1.2倍ですので、重症化しやすい基礎疾患のある人より、ダウン症の人の相対的な危険度が非常に高いといえます。
そして、ワクチン接種後の入院リスクですが、重度の慢性腎臓病や骨髄や臓器移植を受けた人ほど高くはないですが、死亡リスクと同様に、ダウン症の成人では入院リスクが高いことが示されています(2.6倍)。ただ、データのばらつきが大きいため、死亡リスクよりは妥当性は若干下がりますが、基礎疾患を持つ人同様かそれ以上のリスクがあると考えられます。
この研究のデータ収集期間によると、イギリス変異株であるアルファ株やデルタ株が拡大し始めた時期ぐらいのデータになります。現在はやりつつあるオミクロン株にそのまま当てはまるかどうかは慎重に考慮すべきかと思います。
まとめ
コロナウイルス感染が拡大した初期の大規模研究では、一般の人は60歳以上、ダウン症の人では40歳以上で重症化リスクが高まるという結果でした。そこから、多くの方がワクチンを接種することになった現状でも、ダウン症の人は重症化のリスクが高いことが示される研究結果となりました。
つまり、ダウン症の成人の人は、ワクチン接種後であっても他の基礎疾患がある人や高齢者同様(あるいはそれ以上)に脆弱性があると考えられます。よって、ブースター接種や抗体カクテル療法などの予防的早期介入の優先度が高いことが示されたともいえます。
日本では、他国と比べて感染が抑えられている反面、感染者のデータ数が少ないためにイギリスのような大規模なデータ分析は難しいことを考えると、他国の研究データを参考にしていく必要があると思われます。今回のイギリスの研究では、研究結果を活かしたリスク予測は国際的にも活用できることを指摘しています。
以上の研究結果のまとめから、どうしていったら良いかを考えると以下の3点になるかと思います。
- ダウン症の人はできるだけワクチン接種を受ける(できれば2回)。
- ダウン症の人に関わる人(支援者含め)は、より感染防止を徹底する。
- 然るべき団体や専門家が積極的に情報発信や国や行政への働きかけを行う。
コロナとの戦いは未だ終着点が見えない状況ですが、ダウン症の人と共に、一緒に、乗り越えていきましょう。
英語論文を翻訳ソフトも使用しつつ個々で訳した内容をもとにまとめていますので、細かい表現等の翻訳には間違いがあるかもしれませんので、その点についてはご了解いただければと思います。
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