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ダウン症おーくんの子育てブログ
ダウン症関連

ダウン症の子どもの発達の特徴 〜研究結果から分かったこととその活かし方〜

ご覧いただきありがとうございます、うこうこです。

「ダウン症の子どもの発達はゆっくりである」

ダウン症のお子さんがいる親御さん、ダウン症に関わる多くの人が耳にする言葉です。

“全体的な知的能力の発達がゆっくりであること”や”体が柔らかく運動発達がゆっくりである”ことがダウン症の子どもの特徴としてよく言われています。

しかし、”発達”といっても、ことばの発達、運動の発達、認識の発達、目と手の使い方の発達、コミュニケーションの発達…などなど、様々な側面があります。

知的な能力や運動面だけでなく、ダウン症の子どもの発達特徴として、どんなことが分かっているのでしょうか?

その点について、心理検査を用いた研究を紹介し普段の関わりへの活かし方について考えてみたいと思います。

ダウン症の子どもの発達特徴

今回紹介するのはこちらの論文です。

Dykens, E, Hodapp, R, and Evans, D. (2006) Profiles and development of adaptive behavior in children with Down syndrome. Down Syndrome Research and Practice, 9(3), 45-50. doi:10.3104/reprints.293

Vineland(ヴァインランド)という心理検査を用いて、ダウン症の子どもの発達の特徴を研究した論文です。

このVinelandという検査は、対象となる人の4つの力について知ることができます。

①ことばの表現、ことばの理解などのコミュニケーションの力

②食事や着替えなどの身辺自立、家事などの日常生活スキルの力

③人との関わりや余暇を楽しむスキルなどの社会性の力

④細かい動きから大きな動きまでの運動面の力

この4つの力について、ダウン症の子どもの発達ではどのような特徴が見られるのかを研究した論文になります。

Vinelandという心理検査について

●アメリカでは最新版としてVineland-が使われている。日本ではVineland-が使用されており、医療点数を算定する事ができる(=厚生労働省が認めている)心理検査である。
●アメリカでは知能検査と同等(かそれ以上)に適応的な行動がどの程度できているのかについて測定する検査が重要視されており、その代表的な検査としてVinelandが使われている。
●様々な言語に翻訳され使用されている国際的に認められた心理検査である。

心理検査だけでなく、色々な検査を使用してダウン症の特徴について研究がされていますが、使用している検査が信頼できるものなのか、研究領域で認められているものなのか、がとても重要です。その点から考えてみても、今回紹介する研究は説得力のある研究といえると思います。

心理師として働いている僕の印象として、日本の現状ではIQ(知能指数)などの知的能力を評価することに偏重しすぎていると感じています。今後、知的能力に加えて、具体的な行動の様子を評価することの重要性がより高まっていくのではないかと思っています。

研究結果から見るダウン症の発達特徴

研究の結果から分かったことについて要点をまとめました。

4つの力は、年齢の半分ぐらいのペースで成長していく

4つの力を総合的にまとめた点数を見ていくと、7歳ごろまでは年齢の半分くらいのペースで伸びていくことが多いようです。

4歳の年齢の子の4つの力はおおよそ2歳程度の力であるといった目安になるでしょうか。

6〜7歳を超えてくると、成長している子、横ばいの子、退行している子たちが入り混じっり、個々の成長のばらつきが大きくなります。

ダウン症の子どもにはコミュニケーションの強みと弱みがある

ダウン症の子どもはコニュニケーションの力が弱いという結果となっていますが、より詳しく見ていくと

ダウン症の子どもは、ことばの表現が苦手であるが、ことばの理解は強い。

※同年齢の子と比較してではなく、ダウン症の子の中で見たときに相対的にことばの理解は強い傾向にあるということです。

特にコミュニケーションの力が2歳から4歳レベルのダウン症の子どもに、その特徴が顕著であったとの結果となっています。

つまり、言葉が少しずつ出始めてから、ことばの表現の成長は時間がかかるということになります。しかし一方で、指示を聞いて動いたり、人の話を落ち着いて聞いたりする等はよくできることが多いといえます。

ダウン症の子どもは社会性の力が強い傾向にある

今回紹介した研究とは別に、知的能力が同程度である知的障害の子どもたちとVinelandの結果を比較した研究もあります(Cullen et al.,1981、日本版Vineland-Ⅱ適応行動尺度 面接フォーム マニュアル p68より)。

その結果からは、

同程度の知的能力の子と比べると、ダウン症の子どもは社会性の力が強い。

ということが示されています。

つまり、同程度の発達レベルの子と比べて、他者へ関心を持ちやすく、遊ぶことや関わることを楽しむ力が強い傾向にあるといえます。

研究から分かったことのまとめ

ダウン症のこども発達について分かったことをまとめると

①7歳までは、年齢の半分程のペースで成長していくことが多い

②ことばの表現は苦手であるが、ことばの理解は強い。

③社会性の力は強い

ということになります。これらの結果を日常の関わりにどのように活かせば良いのか考えて見ました。

研究の結果を日常に活かしていくには

①子どもの良さを大切にする

何もわからないでいると不安や心配が大きくなり、その子自身をしっかり見てあげることが難しくなります。しかし、年齢の半分ほどのペースで成長することが多いことを知っておくことでゆったりと子どもの発達を身守る余裕が持てます余裕が持てることで、ありのままの子どもの姿をキャッチする事ができ、その子の良さを大切にしていくことができるかもしれません。

②ことばの表現がゆっくりでも、焦らずに、理解を伸ばす関わりをする

『ことばで表現してくれれば言いたいことも気持ちも分かってあげられるんだけど…』という思いもあると思いますが、『焦らずに、今はことばの理解を伸ばしてあげることが大切なんだ』との思いで関わってと良いと思います。

物の名前、様子や動き、状況、気持ちについて、関わる大人がことばにして伝えてあげることが大切です。

具体的な関わり方についてまとめてみました。

「電車あったね」「これはトマトだよ〜」と実物を示しながら物の名前を伝えることで少しずつ理解していきます。

「大きいね」「かっこいいね」といった様子について伝えたり、「お菓子あげるね」「走るよ〜」といった動きをことばにして伝えることも良いです。

この2つのセットで2語分の表現になっていきます。実物を見たり実際に体験することに、ことばを合わせていくことで理解を促していきます。

「手を繋いで歩きます」「病院では静かにします」のように、状況やルールについても具体的にことばで伝えていきます。ポイントは「〜しない、〜はダメ」と否定的な表現は避け「〜します、〜しましょう」と具体的にどうしたら良いのかを明確に伝えます。指示や説明を理解して守ることはダウン症の子は律儀に守ってくれることも多いです。

ことばの表現が苦手だと、自分の考えや気持ちが上手く言えないために、物を投げてしまったり、叩いてしまったり、といった行動で表現してしまうことがあります。少しずつことばや態度で表現できるようになっていくと大抵の子は、どのような行動は落ち着いていきます。そのため、少しずつでもことばで自分の考えや気持ちが言えるようになっていくことが大切です。いけない行動はしっかりいけないことは伝えつつも、「もっとやりたかったんだよね」「負けて悔しかったんだね」といったように、その子の考えや気持ちを推測しながらことばに置き換えて伝えてあげることが大切です。そうすることで、今自分が感じている気持ちがどのような気持ちなのか、ことばでの一致を促し、表現できるように支援していくことができます。

③その子のペースを尊重しながら、人との関わりを大切にする

他の子が遊んでいる様子をじーっと見ていたり、ちょっと真似してやってみたり、上手くできると嬉しくなって、失敗すると悔しくて泣いてしまう。

そのような経験が社会性を育てていきます。観察や模倣(マネをする)は子ども発達にとっても大きな学びになります。嬉しい気持ちを認めてもらったり、褒めてもらうことは自信につながりますし、ネガティブな感情を受け止めてもらうことは気持ちの調整や他者を気遣う気持ちを育てることにつながります。

そのような人との関わりの経験は、ダウン症の子どもにとっては、社会性の力の強みを活かしていく土台になります。

他者への挨拶・関わり方、遊び方などは、大人がお手本としてやってみせたり、一緒にやってみることも大きな学びになります。気遣いができたときには、その子の「優しさ」を褒めてあげることで、他者と肯定的に関わる意欲を伸ばしてあげることができます。

身体的な発達やことばの表現がゆっくりであることから、保育園などでは、下の世代の子供たちの中で生活しているダウン症の子も少なくありません。しかし、ことばの理解や社会性の力は他者との関わりの経験があって伸びていきます。全ての時間ではなくても、他者との関わりの経験を持てる機会を持ち、その様子を評価し、その子にあった支援を考えていくことが大切です。

まとめ

今回は、心理検査を用いた研究から、ダウン症の発達の特徴について整理をし、その結果の具体的な活かし方について考えてみました。

研究を通して分かったことは、子どもの理解だけでなく普段の関わりにおいても役に立つ知識を与えてくれます。うこうこ自身の専門性を活かしつつ、役立つ情報を伝えて行けたらと思っていますので、今後ともよろしくお願いします。

(日本におけるダウン症を扱った研究論文って少ない印象です。もっと研究が増えると良いなぁと思っています)

最後までご覧いただきありがとうございました。

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