ご覧いただきありがとうございます、うこうこです。
ダウン症のおーくん、安心して見ていられるレベルでお座りが安定してきました。
“お座りの姿勢に自分で自由になれること”をひとつの目標として考えてきました。今回は、その理由について解説し、獲得まで意識して取り組んできたことをまとめてみました。
お座りの姿勢が重要なワケ
お座り(座位姿勢)が自分でできるようになることは、発達において大きな意味をもちます。
遊びだけでなく、作業や学習など多くの動作で重要になるのは目で見て手を動かすことです。複雑な動作を効率よく行うためには、目で見ることと手を動かすことを上手に連動する必要があります。その連動する力を目と手の協応の力といいます。
目と手の協応の力を発揮するためには、目で見える範囲に手が自由に動かせる姿勢をとる必要があります。その姿勢が、座位姿勢と立位姿勢です。子どもにとっては立位を長時間維持するのは難しいことと、発達的に座位姿勢を最初に獲得することが多いため、まずは座位姿勢を自由にとれることが重要になります。
ずり這いはほとんどの子どもが獲得できますが、座位姿勢の獲得が難しい子や先に立位を獲得する子もいます。仕事で、実際に子どもの発達を見てそのような発達経過をする子も見ていますし、文献でも同様な記載を読んだ記憶があります(見つけたら詳細を追記します)。座位姿勢の獲得についても個人差がありますので、できないからといって焦る必要はなく、その子の体や性格の特徴等を整理しながら支援者と相談していけると良いと思います。
お座りの本来のかたちとは?
「自分で座れるようになる」ことがお座りの獲得とされることが多いですが、お座りにはいくつかの重要な観点があります。
①自分でお座りの姿勢に移れる
②安定して姿勢を保てる (背筋が丸まらない、両手を自由に使える)
③お座りの姿勢から他の姿勢(多くはずり這い姿勢)に姿勢変換できる
これら全てができてはじめて、お座りをマスターした!といえます。
特に、ダウン症の子では、“座位の姿勢で背筋が丸まってしまう”、“座位から他の姿勢に移れない”ことが起こりやすいため、その点については意識して見てあげる必要があります。
お座りができるまで 〜2つの発達の流れ〜
お座りの発達について、2つの観点から整理しつつ、おーくんが座位を獲得するために重要だったと思われるポイントについて振り返ってまとめてみます。
①姿勢安定の獲得
最初は、自分ではお座りの姿勢はとれないけど、お座りの姿勢にさせてあげれば安定して座って遊べるようになることを目指す段階です。
首が座る
→お座りの姿勢をとらせると、平気でいられる
→お座りの姿勢をとらせると、両手で体を支える
→お座りの姿勢をとらせると、片手で支えてもう片方の手を使う
→お座りの姿勢をとらせると、両手を使う
おーくんは最初、座位姿勢をとらせても、体の柔らかさと腹筋の弱さがあるため、背中が丸まって前傾してしまっていました。
そのため、座位姿勢をとらせたら、補助しながらのお座りを心がけていました。専門書でも、ダウン症の子のお座りでは、補助しながらのお座りの練習が重要と記載されています。
(ダウン症のある子どものための身体づくりガイド 三輪書店 より引用)
リハビリの場面でも同様なことを意識し、支えながらの座位姿勢を練習することをアドバイスされました。腹筋を含めた筋力が弱く前傾になりやすいため、癖にならないように正確な座位姿勢を獲得するためにはとても重要な練習だと教わりました。
練習を続けていくことで、支えがなくても背中を伸ばして座位ができるようになりました。
ここまでの段階にくれば、子ども自身も手の支えを必要とすることが減るため、手を自由に使える様になります。手を使うことことで手を使う遊びへとつなげていくため、下方から徐々に上方にも手を伸ばせるように玩具を使って遊ぶことを意識していきます。
座位姿勢が安定し、手が使えると足を掴む姿が多くみられました。
興味のある玩具を使って掴む練習をしました。慣れてきたところで上方や左右に対象を変えて色んな方向に手を使えるようにしていきます。
②姿勢移行の獲得
お座りの姿勢からずり這い(四つ這い)へ
自分から座位の姿勢へ移行するよりも、座位姿勢からずり這いへ移行する方がやりやすい子が多いです。座ってじっくり遊ぶよりも、何だ〜?と探索する(追いかける)方が発達段階的には早いためです。
おーくんも座位をとらせてからずり這いに移行する方が早くできるようになりました。座位姿勢で両手が使えるようになってきてから少しずつ練習しました。
- 正面の位置から少し離れたところに興味の持てる玩具等を提示(置いたり)してみる
- 短い距離から始める
- 後方から抱き抱えるように支え、手を出す→体を移行する動作を一緒にやっていく
- 慣れてきたら、手の突き始めを左右それぞれ使えるように練習する
自分の力でお座りの姿勢に移行する
いよいよ、自分で座位の姿勢に移る段階です。
自分から座位姿勢に移るパターンは2パターンあります。
実際の様子については動画の方がイメージを持ちやすいと思いますので、動画を作ってみました。観察ポイントを解説で入れていますので参考にしていただければと思います。
❶体を起こしながらひねるパターン
ずり這いで顔を上げて周囲を見るようになると、下の画像の様な姿勢をとるようになります。この姿勢が座位姿勢に移行するには重要な姿勢になります。
この姿勢から、体を起こつつひねることで座位の姿勢がとれるようになります。そのため、この姿勢をとったらサポートしながら座位姿勢に移行する練習をしていきました。また、この姿勢を経由するように、ずり這い姿勢から座位へ移行するように支えながら練習したりもしました。
❷後方に下がりながら座位になるパターン
ずり這いで後ろに下がりながら、お尻を起点に「よっこいしょ」と上半身を持ち上げるように座位姿勢に移行するパターンです。
専門書の記載やリハビリの先生からアドバイスを受けたのは❶の方法で、そちらが基本的な方法になるのだと思います。おーくんの場合、当初は、この❷の方法で座位姿勢になることが多く見られましたが、次第に少なくなり❶の方法で座位姿勢に移行することが多くなりました。
お座りの姿勢を獲得するために大切なひとつの視点
子どもの発達の専門家である白石先生が著書の中で、以下のようなことを書かれています。
ダウン症児は、筋緊張が低いために、体を動かす意欲や目的へ到達しようとする意欲が高まらないのでしょう。乳幼児期には「赤ちゃん体操」などをして、筋力をつけなければならないといわれています。しかし、筋力をつければ良いというのでなく、目的への意欲と最後まで目的を目指して頑張る力を支えてあげなければならないのです。励ましたり、楽しい目的や大好きな目的をつくって、導くことが大切だと思います。
発達の扉 下 白石正久 著 かもがわ出版 より 一部改編し引用
つまり、”形”も重要ですが、座位の姿勢で”何をするのか”という目的やそのための意欲がとても重要だということです。
『お座りすると、楽しいことができる、面白い世界に触れられる。だから頑張ってお座りするんだ!』と子どもが感じられるように、関わる人が意識していく必要があります。
この視点は、座位姿勢に限らずダウン症の子どもの発達全てにいえることだと思います。その子が何に興味を持ちどんなことが好きなのかを見極めていくことや、関心を広げていくことをなくして、発達を考えていくことはできません。
まとめ
おーくんの様子を基に、座位姿勢を獲得するまでの流れを整理してみました。
ポイントをまとめますと
●大まかな流れを知っておくことで、観察や介入の具体性が増すこと
●座位姿勢になることは手段であり、座位姿勢で何を楽しむかを重視すること
となります。
今回まとめさせていただいた内容は、座位の獲得に関する基本の流れにが中心となります。お子さんによって、発達の段階や体の特徴等は異なりますし、今回の流れでなければ間違いというわけでもありません。
発達とは、大きな方向性はみんな同じでも、その進み方やペースには多様性があるものです。そのひとつの経過を知っておくことがお子さんを理解する上で少しでも役に立てれば良いなとの思いで、今回はまとめさせていただきました。
最後までご覧いただきありがとうございました。