ご覧いただきありがとうございます、うこうこです。
同年齢の子の発達には遅れるものの、少しずつ自分のペースで成長しているおーくん。
少しずつ歩けるようになってきましたが、やはり、体は柔らかく不安定な印象は感じます。
これは、ダウン症の子の特徴として挙げられる「筋緊張低下=低緊張」の症状にあたります。低緊張とは力を抜いた時の筋肉の緊張のことを指しますが、力を入れること(=筋力)もダウン症の子どもは弱いため、全体的な運動発達が遅れる原因のひとつと言われています。
この低緊張、良くなっていくものなのでしょうか?
また、低緊張があることで発達の上ではどのようなことを意識しておく必要があるのでしょうか?
それらの点についてまとめて見ました。
ダウン症の低緊張は改善されるのか?
日本の論文より
ダウン症の身体能力をテーマにした論文(真野英寿(2021).ダウン症.総合リハビリテーション,49(7),645-651.)では、理学療法士である著書が、ダウン症の子の低緊張の特徴について、以下のようにまとめています。
- 成長とともに柔らかさは少なくなる
- むしろ筋肉が硬くなっていく
- 学童期以降では「低緊張ではないのではないか」と感じさせられるほどに目立たなくなる
データとして分析されたものではないですが、リハビリでの多様な経験を通して、ダウン症の低緊張は小学生ごろには改善することを指摘されています。そして、
われわれはダウン症児の低緊張がいつまでも続くと感じているのではないだろうか?この思い込みにも似たイメージは医療関係者に強いのではないか?われわれはダウン症児の本当の身体能力を知らないのではないか?
と、ダウン症の低緊張について誤解があることを指摘しています。
ウィンダーズ先生の著書より
ダウン症の体のことといえばこの本!われらがウィンダーズ先生の本です。
この本の中にも、ダウン症の低緊張についての記載があります。
筋緊張低下は年齢とともに弱くなっていき、学校にいく年齢になるとほとんどなくなります。
ウィンダーズ先生のダウン症のある子どものための身体づくりガイド 序章より引用
こちらでも、ダウン症の低緊張は年齢とともに改善し、7歳過ぎにはほとんど見られなくなると説明されています。
海外の論文より
以前の記事で、ダウン症の特徴について多くのデータを分析した海外の論文について紹介しました。
Petchesi, C. D., Ciavoi, G., Feier, F., Iuhas, O. A., Kozma, K., Jurca, C., & Bembea, M. (2021). DOWN SYNDROME–LONGITUDINAL STUDY OF CLINICAL EVOLUTION AND PSYCHO-SOCIAL IMPLICATIONS. Romanian JouRnal of PediatRics, 70(2), 135.
そのな中で、低緊張についても調べられています。対象としたダウン症の子どもの9割に低緊張の症状が見られ、新生児期には顕著でしたが、年齢とともに低緊張の症状は低下したと述べられています。年齢とともに変わらない特徴や進行する症状とは異なり、改善される症状として低緊張が位置付けられています。
結論:ダウン症の子の低緊張は「改善」する!!
専門家の経験、専門書の解説、データ分析した研究、それぞれ共通して「ダウン症の低緊張は年齢とともに改善し、小学生になる頃にはほぼ見られなくなる」と指摘しています。
個人差は若干あるかもしれませんが、ダウン症の低緊張は症状が見られなくなるぐらいに良くなると考えて良いと思われます。
どのような意識で発達を考えていけば良いか?
「低緊張は良くなる」その事実をもとに意識しておくべき大切な視点がいくつかありますので、その点についてまとめてみます。
ダウン症の低緊張は一般的には腕とお腹に強く見られます。
真野英寿(2021).ダウン症.総合リハビリテーション,49(7)より
そのため、ずり這いや四つ這い、つかまり立ちや歩行の獲得を難しくさせます。
また、発達のペースには個人差があるため、ダウン症の運動機能の発達には個々によって大きな差が出てきます。1歳過ぎには歩ける子もいれば、3歳過ぎて歩けるようになる子もいます。他の子と比較して焦る気持ちが出てくるのは当然だと思いますが、焦り過ぎずに、体を使って楽しむことを大切にしていくことが重要です。体のバランス(低緊張が改善し筋力がつく)が整ってくれば、自然と運動発達は伸びていきます。
また、もう一点大切な視点があります。低緊張が改善される目安が小学校に通うようになる頃だと、運動発達がゆっくりな子でも、基礎的な運動動作はほぼ身についている段階です(歩く、走る、上り下りる、ジャンプする等)。多くのダウン症の子は、低緊張がある中で、筋力も十分でない状態で、動作の基礎を身につけていくことになります(すごいことですよね)。そのため、間違った体の使い方で覚えてしまい、余計に負担がかかってしまうことがあります。よって、正しい体の使い方を練習していく必要があります。低緊張がある子へのリハビリが必要な理由がそこにあります。
うちのおーくんも自然とできるようになった動作でも、理学療法士の先生からバランスの悪さを指摘され、修正のための練習が必要なことが何度かありました。
つまり、動作ができるようになることよりも、正しい体の使い方ができているかどうかが重要です。そしてそれは、初期の運動動作の獲得段階から正しい体の使い方を練習していく必要があります。
専門の先生に診てもらうことや、ウィンダーズ先生の書籍を参考にすると良いと思います。値段は高いですが、ダウン症の運動発達を知り、正しい使い方をどう練習したら良いかが写真を豊富に使いながら具体的に書かれています。ダウン症の体のことならこの1冊あればOKというぐらい素晴らしい本です。
以上、ポイントを最後にまとめます。
❶低緊張は年齢と共に改善していき、小学生になる頃には見られなくなる。
❷そのため、乳幼児期に運動発達が遅れていても、焦らずに、体を使って楽しむことを大切にする。
❸初期の運動動作の獲得段階から正しい体の使い方を練習していく必要がある。
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