ご覧いただきありがとうございます、うこうこです。
前回の記事で、ダウン症(DS)のどのくらいの人に自閉スペクトラム(ASD)が併存するのかについて解説しました。
簡単にまとめると、ダウン症でない人と比べてダウン症に人はASDを併存しやすいということが多くの研究から分かっています。
ではなぜ、ダウン症の人ではASDを併存する人が多いのでしょうか?
その理由については、現在まだはっきりとした結論は出ていません。
しかし、いくつかの仮説が示されていますので、今回は、その中でも説得力があるとされている仮説を2つ紹介したいと思います。
①知的障がいがあるとASDが併存しやすい
まずひとつ目の仮説ですが、ダウン症そのものというよりは、ダウン症のほとんどの人に併存する知的障がいによる影響が大きいというものです。
というのは、知的障がいがあるとASDが併存する確率が高くなるといわれています。
また、知的障がいの程度が重いほどASDが併存しやすくなるともいわれています。
つまり、ダウン症のほとんどの人が併せ持つ知的障がいの要因により、ダウン症にはASDが併存しやすいということが考えられます。
②ダウン症とASDの原因となるタンパク質が同じ
ダウン症は21トリソミーとも言われるように、21番染色体が3本あることで引き起こされる先天性の疾患です。
その21番染色体が管理しているDYRK1Aというタンパク質は、ダウン症のいろいろな症状を引き起こすと言われています。
さらにこのDYRK1Aは、ASDや他の精神疾患の原因のひとつでもあるのです。
京都大学の研究報告によると、
第 21 番染色体にコードされている DYRK1A というタンパク質は、これらのダウン症のさまざまな症状に深く関与しています。更に、DYRK1A の機能異常は自閉症スペクトラム症候群やその他の精神神経疾患の原因の一つである事も知られています。
つまり、DYRK1Aというタンパク質は、ダウン症とASDと精神疾患の3つに影響を与えているのです。
よって、“ダウン症の人はDYRK1Aに何らかの特異性や異常があり、それがASDや精神疾患の症状を引き起こしている可能性がある”という仮説が考えられます。
まとめ 〜今後のDS-ASD研究に期待!〜
2つの仮説を紹介しましたが、他にもいろいろな仮説が検討されています。
現段階ではっきり言えるのは、
「ダウン症の人にASDが多い理由はまだはっきり分かっていない」
ということだけです。
そのため、今後、ASDや知的障がいの研究に加えて、特に、DS-ASDの研究が行われていくことが必要です。
ダウン症の遺伝子の研究(認知症領域など)は研究が盛んですが、DS-ASDの研究は世界でもまだまだ少ないようです。特に日本においてはほぼ行われていないと思います。
しかし、DS-ASDの人の理解を促していくことや支援体制を構築するためには、学術的な研究によって導き出された知見は絶対に必要です。
そして、「ダウン症は人なつっこい」と典型的なダウン症像が多く語られる中で、ダウン症の人にも多様性があることの理解を広めていくことにも役立つと思います。
そのような理由から、今後の研究の進展に大きく期待したいところです。