ご覧いただきありがとうございます、うこうこです。
この記事を書いている2020年11月現在、コロナウイルス第3波として、日々、感染拡大が続いている状況にあります。中国の武漢でコロナウイルスの発生が確認されたのが2019年12月なので、コロナウイルスの驚異に晒されておよそ1年経過することになります。
その間、世界的に様々な研究がなされていますが、気になるのは合併症を抱えやすいダウン症の人への影響やリスクはどうなのか?ということです。ダウン症のおーくんはまだ8カ月ですので、乳幼児への影響はとても気になります。
そこで、論文検索やダウン症に関連する学会のHP等で調べてみましたが、ダウン症とコロナウイルスに関する日本の文献等は見つかりませんでした。
しかし、海外の文献では、ダウン症の人を対象にした2つの大規模な研究がありましたので、そちらをまとめてみました。濃い内容の研究になりますので、2回に分けて整理していきたいと思います。
データの解釈や読み取りに関する難しい内容を含みますが、出来るだけ分りやすく解説してみましたので、一読いただけるとありがたいです。
①成人のダウン症におけるコロナウイルス死亡リスクについて
ひとつ目の研究は、日本語に訳すと
”ダウン症におけるCOVID-19死亡リスク:800万人の成人を対象としたコホート研究の結果”です。
Ashley Kieran Clift et al.,”COVID-19 Mortality Risk in Down Syndrome: Results From a Cohort Study Of 8 Million Adults,”Annals of internal medicine,October,21,2020.
イギリスでの研究で、826万人の成人(うち4026人がダウン症)を対象とした大規模な研究です。ダウン症の成人とダウン症でない成人を追跡調査を行い、コロナウイルスでの死亡率を色々な観点から比較した研究になります。
重いテーマになりますが、死亡リスクは気になるところではあります。
結論としては、ダウン症の成人では、コロナウイルス関連の入院のリスクが4倍、死亡のリスクが10倍になるという結果になっています。腎臓に関する病気がある人や、糖尿病の人などは死亡リスクが高いという結果になっていますが、それらよりもダウン症であることの方が死亡リスクは高い結果になっています。また、飲酒や喫煙の有無と死亡リスクとでは関連がなく、ダウン症の年齢、性別、BMIと死亡リスクとの関連も見られなかったという結果となっています。
えっ!?そんなに!!とびっくり。ダウン症の小さい子もそんなに死亡リスク高いの!?と思ったのですが…
しかし、よくよくデータをみてみると、コロナウイルスでの死亡時の年齢の中央値(データを小さい順から並べた時に全体の真ん中の値)は、ダウン症でない人は83歳、ダウン症に人は61歳となっており、データ全体のばらつきを示すと想定される数値を見ると、ダウン症またはダウン症でなくても、死亡している人のほとんどが高齢の人になっています。あくまで、死亡した人はほとんどが高齢の方で、高齢の人の中では年齢の差が見られなかった、ということになると思われます。
この中央値の値ですが、ダウン症でない人、ダウン症の人、共に平均寿命の値とほぼ同じ値になっています。コロナウイルスの死亡年齢の中央値で、ダウン症とそうでない人の間で20歳の差がありますが、そもそも平均寿命の差でも同程度の差があるのです。つまり、ダウン症かどうかに関係なく、平均寿命に近い人は死亡リスクがあるということです。
まとめ
- 高齢なダウン症の人はコロナウイルスによる死亡リスクが高くなる。
- ダウン症の成人は入院リスクが高くなりやすい(国による医療体制による違いはあるかもしれません)
この研究は、成人の死亡リスクに焦点を当てた研究でしたが、重症化のリスクはどうなのか?子どもはどうなのか?合併症とかとの関連はどうなのか?は気になるところです。それらについては、もう一つの研究で分かってきた事がありますので、次の記事でそちらを見ていきたいと思います。