ご覧いただきありがとうございます、うこうこです。
ダウン症を考える上で欠かせないテーマのひとつが“寿命”です。
「どのぐらい生きられるのか?」を知ることはダウン症の人と共に生きていく上でとても重要です。
“ダウン症は短命である”ことは昔から指摘されてきました。
しかし、その常識は覆されるようになってきました。
今回は、最新の研究から分かったダウン症の寿命についてと、世界最高齢のダウン症の方についてまとめてみたいと思います。
ダウン症と寿命
医療技術の進歩により、ダウン症の方の寿命はここ数十年で飛躍的に伸びています。
特に、合併症への治療技術の進歩により、乳幼児期に死亡することが少なくなったことの影響が大きいと言われています。
さらに、社会的な認識の変化、運動を中心とした発達のフォロー、生活への支援など、ダウン症の理解と具体的な支援が充実してきたことも大きな要因として考えられています。
ダウン症の方の平均寿命は?
2021年時点で、様々な研究のデータによるとダウン症の平均寿命は約60歳といわれています。
2013年のアメリカの研究(Presson AP, et al. J Pediatr. 2013;163(4):1163-8 )では、ダウン症の人の平均寿命は約60歳であるとのデータが出ています。
また、2002年のオーストラリアでの研究(Glasson, E. J, et al. The changing survival profile of people with Down’s syndrome: implications for genetic counselling. Clinical genetics, 62(5), 390-393.)では、西オーストラリア州のダウン症の1332人を継続的に調査・研究を行っています。そこで、ダウン症の人の平均寿命は58.6歳、25%の人がは62.9歳まで生き、最年長の生存者は73歳だったと示されています。
日本でのダウン症の人の平均寿命は?
ダウン症の人の平均寿命について、最近の日本のデータはありません。
書籍や文献、ネットの情報のほとんどが、海外の研究データを引用して「ダウン症の平均寿命は60歳である」と指摘しています。
しかし、海外のダウン症の人の平均寿命をそのまま日本人に当てはまるかも少し疑問があります。
人口全体の平均寿命を見てみると2013年時のアメリカの平均寿命は78.74歳で、日本は男性80.21歳・女性86.61歳となっておりどちらも上回っています。最近の2021年では、アメリカの平均寿命は78.85歳で、日本は男性81.64歳・女性87.74歳となっていて、アメリカは8年前とほぼ変わらないのに対して、日本は男女とも1歳以上伸びています。
上述のアメリカの研究が2013年に出されていますが、その時点で日本人の方が寿命は長く、最近の2021年ではその差はより大きくなっています。
一般の人が多数である人口全体のデータをダウン症の人にそのまま当てはめることはできませんが、日本のダウン症の人は海外のデータで示されているよりも寿命が長い可能性も考えられます。
ちなみに、2021年の日本の平均寿命は、男性は世界2位(スイスが1位)、女性は世界1位となっています。
ダウン症の高齢の方の死因は?
また、2007年のオーストラリアで約1300人のダウン症の人を対象にした研究(Bittles AH, et al. Eur J Public Health. 2007;17(2):221-5. )より、40歳以上のダウン症の人の死亡原因は以下の通りです。
- 肺炎・他の呼吸器疾患(40%)
- 冠動脈疾患(10%)
- 心不全・腎不全・呼吸不全(9%)
- 脳血管障害(6%)
- 腫瘍(5%)
呼吸器系や心疾患系が多くを占め、一般の高齢者の死亡原因でよく聞かれるものが占めています。特別な死亡原因がるわけではないということは、今後も平均寿命は伸びていく可能性があると考えることもできます。
大きく異なるのは、悪性新生物(がん)が少ないことです。この点について、研究の考察では「今後ダウン症の人の平均寿命が伸びていけば、成人発症の癌および高齢に関連する非悪性疾患の発生率が高くなっていくことが予想される」と述べられています。
現時点で一般的な理解とされることも、今後大きく変わっていくかもしれませんので要チェックですね。
ダウン症の世界最高齢は?
2021.9月時点でのギネス記録によると、ダウン症の世界最高齢は83歳です。
アメリカのイリノイ州のダウン症の女性で、K夫人としてのみ知られています。この方は、股関節の骨折による合併症を発症した後、83歳で亡くなっています。
現在、ご存命での最高齢はイギリスのGeorgie Wildgustさんで79歳(ご存命なら2021年8月で79歳になっておられますが、78歳以降の情報が見つかりませんでした)です。
先進国の平均寿命と同じくらい長生きされているのは本当にすごいですね。そして笑顔がめっちゃ素敵!
Wildgustさんは、医師からは10歳までは生きられないだろうと言われていましたが、その予想を大きく覆しました。ダウン症への常識が大きく変わっていった怒涛の時代を生き抜いてこられて、多くの苦労があったことかと思います。
現在は、ケアホームで同居者の方たちと楽しく日々を送っているそうです。妹さんとSkypeで連絡を取り合ったり、ダンスをしたり、海辺でフィッシュアンドチップスとアイスクリームを食べるのが楽しみとのことです。まだまだ、長生きして楽しい時間をたくさん過ごしてもらいたいです。
仲間と繋がりながら楽しく日々を過ごす、というのはダウン症の人にとってのひとつの理想の生き方ですよね。
まとめ
- ダウン症の人の平均寿命は約60歳である(海外のデータである点は注意が必要)。
- 40歳以上のダウン症の人の方の死因は、一般的な高齢者の死因と比べて、がんが少ないこと以外は大きく差異はない。
- ギネス記録はアメリカの83歳の女性ですでに亡くなっている。
- ご存命での最高齢は、イギリスのGeorgie Wildgustさんで79歳である。
今回、ダウン症の人の寿命について調べていて日本での研究がほとんどないことが気になりました。前述したように、「ダウン症の人の寿命は60歳まで伸びた」との情報は出てくるのですが、根拠となるデータが示されていなかったり、今回引用した海外の研究結果に基づいたものがほとんどでした。
海外(特にアメリカ)だと、様々な疾患について死亡原因や平均寿命に関するデータを取り、そのデータに基づいて医療や福祉の整備に活かす取り組みをしています。日本はそのような取り組みは少なく、ダウン症に限ってはほとんど行われていません。今後、全体の実態を把握していく取り組みが行われていくことに期待したいと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。