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ダウン症のお子さん、以下のような口を見せることはありませんか?
いづれも唇を突き出したような口の形を見せています。「言われてみればよく見るかも!」という方も多いのではないでしょうか?
実は、ダウン症児が見せるこの特有な口はとても重要な意味があったのです!
カリメロというキャラクターとの関連
唐突ですが、カリメロというアニメのキャラをご存知でしょうか?
カリメロとは、卵の殻を被った黒いひよこのキャラクラーです。
1963年にイタリアの漫画家によって考案され、その後、各国でアニメ放映がされる様になったキャラクターです。1963年というと日本では鉄腕アトムとか鉄人28号とかがアニメで放映されていた時期みたいです。僕も小学生の頃にアニメでちらっと見た記憶がありますが、スラムダンクの桜木花道に「カリメロ」と呼び名をつけられた豊玉高校の南のイメージの方が強いですね。
そんなカリメロというキャラクターですが、このキャラクターのくちばしの様子と、前述しましたダウン症児がみせる特有の口の形、似ていませんか??
カリメロの口とダウン症
ダウン症専門医の飯沼先生の書籍より
ダウン症児の特有な口の様子を「カリメロの口」として解説されている本があります。それが『ダウン症のこころ 飯沼和三 著 同成社』です。
ダウン症専門クリニックを開業されている医師の飯沼先生が書かれた本です。2019年5月に出版されており、割と新しい本です。長年にわたりダウン症の診察や支援をされてきた先生の経験をもとに、ダウン症の本質について解説されています。
その本の中で、ダウン症児が『カリメロの口』をするときは”絶好調”のときであることが解説されています。
上唇が微妙に突き出され、真ん中の部位がとがっているのです。これをカリメロの口と言って親御さんに説明します。このとき頭脳は絶好調な状態で、体験し感知したもろもろな情報は、鮮明な記憶となり、蓄えられます。
ダウン症のこころ P 11、12より引用
つまり、ダウン症児が「カリメロの口」を見せるときは、脳の情報処理が絶好調のときであり、感じたこと経験したことが記憶に残りやすい状態のときである、といえます。
実際のダウン症児を観察してみて
僕は公認心理師・臨床心理士として、障害のある子どもたちの心理的支援を仕事としていますが、その中で、ダウン症児へ発達検査を実施したり面接をする機会があります。検査課題に取り組む様子やおもちゃで遊ぶ様子を観察し評価するのですが、そのときにこの「カリメロの口」は結構見かけます!
受け身的に何かをやらされたりするときにはあまりみられませんが、興味・関心があるものに対して自分から働きかけているときに多くみられる印象があります。
周囲のものや人に、自分から働きかけているときは、子どもにとって大きな学びが生じているときです。物の概念やあり方、その操作の仕方などを体験的に学んでいるのです。そこに、興味・関心が加わることでその学びの質は何倍にもなります。
まとめ
今までの解説をまとめると、
・環境への主体的な働きかけが見られている
・興味・関心が大きく動いている
・脳の情報処理が効率的に働いている
・体験が記憶に定着しやすくなっている
「カリメロの口」が見られるときは、主体性を発揮しているときなので、そのときの様子を遊びややりとりに活用していくことで全体的な発達に大きなプラスの影響を与えることになります。
また、「カリメロの口」をしているときに行っていることは、興味や関心を持っていること、もしくは持ち始めていること、といえます。
先程の書籍の中で、飯沼先生はダウン症児の記憶と学習に以下の様に解説されています。
ダウン症児に無理やり学習をさせることには意味がないのです。何か工夫をして、子どもの気分がノリノリになってきたら、その時こそ学習のチャンスです。どうすればダウン症児に興味を抱かせることができるか、という一点に、学習の運命がかかっているのですが、これは、かなり難しい課題かもしれません。こういう頭脳の使い方の特徴が分かったならば、いわゆる全方位型の知能向上を目指すのではなく、一つの狭い領域の知能を徹底的に深めるやり方のほうが、成功への近道だと思います。言ってみれば職人型のやり方と言えましょう。
ダウン症のこころ P 12より一部省略し引用
というように、ダウン症児の学習においては興味や関心が持てることを大切にして伸ばしていくことを指摘されています。そのため、「カリメロの口」が見られているときに、その子が行っていることは、その子にとって今後伸ばしていくと良いことと言えます。
以上より、「カリメロの口」はダウン症児にとって、発達上とても意味のある仕草だったのです。普段のお子さんの様子を観察するひとつの視点として参考にしてみてください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。