ご覧いただきありがとうございます、うこうこです。
2023年6月16日に、ダウン症の新刊本が出ました!
それがこちら↓
ちなみに1冊2200円しますので、4冊揃えるとなかなかのお値段に><
そのため、とりあえず1と2を購入して読んでみましたので、ガチレビューをまとめたいと思います!
この本をオススメする人はどんな人?しない人は?
内容ですが、1と2のどちらも、本の半分は基礎的な知識と支援の基本的な考え方についての解説となっています。
残りの半分は、ダウン症の年齢ごとの発達課題が表(アセスメントシート)にまとめられていて、その課題の個々の解説になっています。
こんな感じです↓
この本を通して言えるのは、
ダウン症の子の発達ペースを考慮してまとめられていますが、基本は発達理論の基礎的な流れに沿ったものであり、
ダウン症特有の発達課題があるわけでない
ということです。
また、本の内容全体にも言えることですが、新しい知見が記載されているわけではなく、ダウン症の基本、言語発達の基本、知能の基本(知能の定義とは?等)がざっくりとまとめられている感じになっています。
そのため、
ダウン症のことを初めて学ぶ方にとっては役立つ書籍になっている
と思います。
一方で、ある程度、他の書籍を読んだことがある方やネットで調べられて知識がある方にとっては、そこまで必要性が高いとは言えないと感じました。
僕の正直な感想としては、正直○○です!
読み終えた感想は?
1と2を読み終えた感想は、
『ダウン症に特有の支援や関わりはほぼないんだなぁ』
です。この事実を再確認したって感じですかねぇー。
ダウン症の子どもへの関わり方や支援の方法のほとんどは、発達がゆっくりな子や発達に偏りがある子(発達障がいを含め)への関わり方や支援の方法とほぼ同じです。ダウン症に特化したものはほぼありません。
シリーズ1の本の、ことばを育てるために家族はどう接すればよいか?の章のまとめでは、実際に以下のような記載があります。
ここまで読んでいただいて、「あまり他の子と変わらないな」と感じていただけたのではないでしょうか。
ことばを育てる ダウン症の発達支援アセスメント&プログラム 1 P54より
つまりこのシリーズは、「発達に何らかの支援が必要な子への基本を学ぶ」ことが内容の核で、『ダウン症の子もそんなに大きく変わらないんだな』と理解するためには役立つ本だと思います。
ただ気になる点も…
ただ、心理師として障がいのある子どもを支援する立場にある僕としては、内容が気になる点がいくつかありました。
- ダウン症=人懐っこい、愛想が良い、社交的、陽気、模倣力が高い、という前提で話が展開される点
多くの研究で、そのようなタイプのダウン症の人が多いことはわかっていますが、ダウン症と言っても多様で、そうでないタイプのダウン症の方もいます。ASDを合併している方は上記に全く当てはまらない場合も多いです。”よく言われるダウン症の人の特徴はあくまでダウン症中の多数派に見られる特徴であり、ダウン症にも多様性がある“ということをしっかり伝える内容がなったのは残念です。
- 章によっては文献の記載が全くないため、何を根拠に述べているのか分かりにくい。そして、全体的に文献が古い
ダウン症の子への関わり方を述べつつも根拠となる文献が全く載っていない章がいくつかありました。支援者に向けての解説も意図している本なのであれば根拠となる文献はしっかり示していくことは必要だと思います。
そして、ある章では12の文献が記載されていますが、ここ10年以内の文献が3つしかなかったりと、全体を通して古い文献を参考にしているという印象でした。これらは、ダウン症に関する研究が広がっていっておらず、エビデンスのある情報が積み重なっていない現状が背景にあるのだと思います。
- アセスメントシートの課題の難易度が適切なのか?との疑問がある
ことばのアセスメントシートで、ダウン症の2歳の子では「2語文が話せる」というチェック項目がありますが、健常の子が2歳で2語文を話せるようになることが多いので、ダウン症の子の発達ペースでは難しいのでは?と感じます。また、知能のアセスメントシートでは、3〜4歳で「左右の区別がつく」との課題がありますが、健常な子でも、左右が反対の意味を示していることが分かるのは4歳以降で、左右が正確に分かるのは5歳半以降です。そのため、発達がゆっくりなことが多いダウン症の子が、3〜4歳で左右が区別がつくようになるとは思えません。そのように発達段階として疑問を感じる課題がいくつかありました。
- 日本で活用されている知能検査の具体名に「???」
シリーズ2の知能を育てるの本の中に、以下のような記載があります。
日本では特別支援学校や療育機関等多くの臨床現場で「田中ビネー知能検査Ⅴ」が活用されいる。
都道府県によっては違うのかもしれませんが、僕が居住している件では、ウェクスラー式の知能検査(子ども対象ではWISC:ウィスクが有名)が主流です。ウェクスラー式の実施が難しい場合は、新版K式発達検査などを実施することが多いです。田中ビネーを使うのは療育手帳の判定の時ぐらいです。特別支援学校をはじめとした教育場面で田中ビネーを実施したということは聞いたことがありません。田中ビネーは知能指数(IQ)を算出できますが、その子の得意な力や苦手な力を見ることはできないため、それらを見ることができるウェクスラー式の方が現場では活用されていると思います。
という感じで、”専門書”というには疑問を感じる点は多かったです。根拠となる文献をしっかり示すというエビデンスベースという点では説得力に欠ける点は否めないかなと感じました。
それと、これからダウン症を知りたいという人向けの本ではあると思うので、もう少し安く、コンパクトになっていたら良かったのになぁーと思いました。(著書の先生が多いので難しかったのかも知れません)
ちなみに、ダウン症の子育てをされた親御さんが書かれた章があるのですが、個々の事例としての面白さと親御さんの感情の揺らぎに共感する点も多々あってとても面白かったです。
まとめ
ダウン症に関する書籍は少ないので、新刊が出ると知り、早速購入してレビューさせていただきました。
【基本の”キ”を抑えるには良いけれど、新しい知見や支援方法を求めている方には不十分である】
というのが結論です。
しかし、ダウン症について日々尽力されている方が多くいらっしゃるということが未来への希望であると思います。役立つ情報を発信してくれる方の存在によって、僕たち家族をはじめ、多くのダウン症の方や関わる人が支えられています。そのため、今回レビューさせていただいた本の出版に関わられた先生方や編集部の方には本当に感謝です。
ありがとうございます。
ということで、少し辛口気味になってしまいましたが、率直なレビューをさせていただきました。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!