ご覧いただきありがとうございます、うこうこです。
早速ですが、問題です!
知的障がいとは、知能指数(IQ)が低いことを指す
○か×のどちらでしょうか?
正解は、×です。
少し前までは、○が正解でした。現在もそのように理解している人も多いと思います。
しかし、知的障がいと診断するための基準が、ここ数年で変わってきています。
「知能指数が低いから知的障がいである」という認識は、現在では正しくありません。
そこで、今回の記事では、知的障がいの診断基準について分かりやすく整理していきます。このポイントを理解しておくことは、知的障がいのある人を支援する上でもとても重要な観点になりますので、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
今までの知的障がいの診断基準
少し前までの知的障がいの診断基準とは、
「知能指数が低いこと」であり、具体的には
「知能検査で測定される知能指数(IQ)が約70以下であること」でした。
そして、IQの数値によって重症度が決められていました。
- 軽度 :IQ 50~約70
- 中 度 : 35~50
- 重 度 : 20~35
- 最 重 度: 20以下
※若干の前後あり
しかし、この診断基準は、“知能指数の数値に偏った診断基準である”との問題点が指摘されていました。
そして、最近の診断基準の改定で大きく変わってきています。
国際的な診断基準の改定
国際的に使われている診断基準は、大きく3つ挙げることができます。
- ICD…世界保健機関(WHO)が定める国際疾病分類
- DSM…アメリカ精神医学会が定めている、精神に関する疾患(知的障がいや発 達障害を含む)に関する診断基準
- AAIDD…米国知的・発達障害協会が定める基準
日本の医療においても、ICDやDSMの診断基準を用いて診断をつけています。
それらの3つの診断基準の最新バーションでは、知的障がいの診断基準において、3つの全てにおいて基準の変更が行われました。
それは、
知的障がいとは、知能指数が低いことに加えて、適応行動の不十分さの両方が見られること
となり、”知能指数が低い=知的障がいである”と知能指数の数値だけで安易に診断されるものではなくなりました。
適応行動とは?
人々が日常生活で身につけて実行できているスキルのことです。
- 生活をこなすスキル…炊事・洗濯・掃除をこなす、など
- 基本的な読み、書き、計算のスキル
- 社会スキル…挨拶・会話などのコミュニケーション、人と関わる、充実した余暇を過ごす、規則を守る、など
これらの適応行動の力は、知能指数とは別の力であるとされています。
そして、知的障がいの重症度については、ICDの診断基準では知能指数の数値を参照するようになっていますが、DSMの診断基準では、知能指数の数値によって重症度を評価しないことになっています。代わりに、適応行動の様子によって重症度を評価することになっています。
知能指数が高いと何でもできる!は間違い
知能指数が高くても、人とうまく話せない人や日常生活の身の回りのことをができない人もいます。逆に、知能指数が低くても、身の回りのことができて、人と楽しく関わることができて、余暇も楽しめている人もいます。
知能指数が高い人は何でもできると思われがちですが、”知能と日常生活で実際に何ができるのか”は異なります。厳密には知能指数が高くてもテストで高得点が取れるわけでもありません。
知能指数とはあくまで”脳が情報の処理をいかに効率よくできるかどうか”を測定したものであり、その力が高いからといって、何でも人より上手く効率よくこなせるわけではありません。いくら性能が良いパソコンであっても、アプリやソフト(スキル)がないと力を発揮できません。逆にアプリやソフトの質が高ければ、あまり性能が良くなくても十分に使えることもあります。
“障がい”は人の中にあるのではなく、社会との関係の中にあるもの
そもそも、障がいという概念は社会的な概念です。障がいかどうかは、その社会で生きていく上でハンディがあるかどうか?によって定義されるからです。
知能指数が低くても、日常生活が充実し、社会的な活動が行えていれば、困ることはありません、そのような人にはわざわざ「知的障がい」という診断つける意味がありません。
つまり、障がいとは、能力とか性格とかその人の中身にあるものではなく、その人と社会との関係の中に存在するものなのです。
知的障がいの診断は新たなステージへ
以上より、現在の知的障がいの診断は「能力だけを見て診断するのではなく、社会的な観点から普段の生活で実際に何ができているのか?についての評価も踏まえて診断をする」という流れになっています。
このような変化は福祉等のサービスにも影響するようになってきています。
よって、知的障がいの診断基準の変化については、ざっくりとでも理解しておく必要があります。いまだに知能指数の数値がその人の全てであるかのように判断されてしまうことは少なくありません。数値というものは、具体的かつ直感的に分かりやすいためだと思います。そのような時に、適応行動の観点から、普段の生活の様子について情報を伝えて共通理解を図っていくことが必要になることもあります。
知的障がいの診断基準が大きく変わってきていますが、十分に理解されているとは言えない現状がまだあります。そのため、少しでも現状を知ってただきたい気持ちもあり、知的障がいの診断基準についてまとめさせていただきました。少しでも参考になれば嬉しいです。
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