ご覧いただきありがとうございます、うこうこです。
本日(2022.3.27)、日本ダウン症協会が以前より実施していた調査の報告が行われました。
「ダウン症のある方たちの生活実態と、ともに生きる親の主観的幸福度に関する調査」です。
興味深いデータがたくさんあり、ひとつひとつ詳細な分析がとても面白かったのですが、その中でも、ひとつ意外だったデータがありましたのでその点についてまとめてみます。
日常生活における困難度の第1位が”こだわり” その割合はなんと…
「普段の生活の中で、ダウン症の人のどんなところに難しさを感じるか?」との問いに対して、約53%の人が”こだわり”と回答していました。当事者の性別で変わりはなく、男女ともに同程度の割合でした。
次いで、
- ”何度も同じ話をする”(約25〜28%)
- ”集中力が続かない”(約23%)
- 支援しようとしても拒否する(約21%)
となっていました。
玉井先生は「これらは、ダウン症に特徴的ではない、と考えています」と述べられていましたが、その理由や詳細については述べられていませんでした。
それには僕も同様な考えでいます。つまり、ダウン症というより、自閉スペクトラム症や注意欠如多動症などの発達障害の症状によるものや、心理的な問題による影響によるものだと思います。
その中でも“こだわり”はどのように説明され得るのか、について少しまとめてみます。
“こだわり”にも種類がある
“こだわり”については約2人に1人の割合で、日常生活に困難を感じる程に見られているとの結果となり、大きな割合となっています。
今回の報告では”こだわり”の内容については分かりませんでしたが、一概に”こだわり”といってもいろいろな種類があります。
①自閉スペクトラム症による”こだわり”
発達障害のひとつであるASD(自閉スペクトラム症)の特徴として、”こだわり”の強さがあります。
- 勝ちや「1番」にこだわる
- やり方や道順にこだわる
- 物にこだわる(ボロボロでも手放せない、食べ物、等)
- 色や形にこだわる
- 場所にこだわる
などに強いこだわりを持ち、その通りにならないとパニックを起こしたりすることがあります。逆に、こだわりに沿って行動することが安心感となり、ルーティンとしてこなすことで精神的に安定するといった側面が見られることもあります。
近年、ダウン症でありながら自閉スペクトラム症の特徴を持つ人(DS-ASD)が注目されるようになってきています。それは、ダウン症に特徴な知的障害に対しての関わりだけでは上手くいかず、自閉スペクトラム症の特徴に合わせた関わりが必要になってくることが影響していると思います。
②”こだわり”として見える精神的な症状
例えば、不安傾向が強い人は、決まったルーティンを崩されたくなかったり、先の予定などの見通しが見えないことが嫌ではっきりさせておきたかったりします。
また、精神的に病的な不安を抱えていると、対人不安が強いために人を避けることに”こだわる”、失敗したり見落としていたのではなないかと確認することに”こだわる”、不潔な感じが消えないために潔癖にすることに”こだわる”、といった症状が出てきます。これらは、いわゆる不安障害と呼ばれる精神疾患を抱えてしまっている場合です。このように、”こだわり”の背景に心理的な問題や精神疾患が考えられる場合があります。
③心理的な傷つきによる”こだわり”
いわゆる二次障害と呼ばれる、心理的な傷つき体験によって引き起こされる症状が”こだわり”として見える場合があります。
例えば、字をきれいに書くことを強要されてきたあまりに、「字は常にきれいに書かないといけない」という誤った信念を強く抱えるに至ってしまい、字をきれいに書くことに”こだわる”ようになってしまう人がいます。
支援者や先生などの大人に、理解されずに苦痛を味わされてきたトラウマ体験があると、人を信用できなくなり、自分のやり方に”こだわる”ようになります。また、「他人は信用できない」といった誤った信念をもつようになり、いざという時に支援者からの手助けを拒否するようになります。
家庭以外の社会的場面(学校など)での傷つき体験を抱えると、支援を受けることを拒んだりするようになり、他者に頼ったり相談したりすることが難しくなるケースも多いです。”支援を拒否する”当事者が2割もいるという結果の背景には、本人要因以外にも社会的な要因が大きく関わっている可能性が考えられます。
ダウン症の”こだわり”はこれからの重要なポイントになる!
タイトルの通り、困り感を抱えている人が多いという結果が明らかになったため、今後、ダウン症の”こだわり”はダウン症を理解する上で(ダウン症の特徴としてという意味ではなく)、重要なひとつの観点になると思います。
DS-ASDが注目されてきていること、心理的または精神的な問題を抱えているダウン症の人が多い可能性があること(”退行”と言われる症状に繋がっているかもしれない?トラウマという観点から考える必要があるかもしれない?)などを考えても、ダウン症にとって重要なテーマだと思います。
ダウン症と発達障害との関連、心理的問題や精神疾患の有無、育ちの経験の影響、等が今後研究されていくかもしれません。
別の調査報告と関連づけて考えてみる”ダウン症の多様さ”
「ダウン症の子はこんな感じ」と典型的に語られることが多くありますが、実は、ダウン症の子の状態像は多様だと思います。
合併症の有無だけでなく、発達の経過の違い、性格の違い(ダウン症=頑固ではない)、自閉スペクトラム症やADHD(注意欠如多動症)の合併、等々、実は多様な状態像が見られます。
今回の調査研究では、親へのアンケートで、どのような人から「”励まし”を受けたか?」という項目があり、ダウン症の子どもの他の保護者からは、あまり励ましを受けていないとの結果になっています。母親に限っては、ダウン症の子本人を除外すると、一番励ましを受けていない対象との結果になっています(職場の同僚、近隣住民、旦那の両親よりも低い結果)。あくまで個々の考察になりますが、励まし自体を受け取っていないのではなく、他者の励ましがあまり役立っていない(むしろ、逆効果になっている可能性もある)、のではあいかと考えることもできます。
その理由のひとつが、“ダウン症の子の状態像は多様である”ためではないかと考えます。例えば、自閉スペクトラム症の傾向が強い子の場合、一般的な子育ての仕方とは異なる視点が必要になります。
一括りにされることが多いけれど実際は多様さがあるのがダウン症です。それゆえに、励ましを受けたとしても『なんか違う感』や『できていない感を刺激されて落ち込む』を感じてしまうのかもしれません。
この点は、親同士のつながりや、ダウン症協会の在り方にも関係すると思いますので、研究として詳細な検討が進んでいくととても役立つのではないかと思います。
僕にとって厳しいデータも…
医療機関で働く立場としては重く受け止めなければいけないデータがひとつありました。
医療関係者や福祉関係者の言動があまり励ましにつながっていない、という結果です。知識や経験だけではなく、支援者としてのあり方を今一度しっかり見つめ直す必要があることを痛感しました。
まとめ
興味深いデータがたくさんあり、僕自身整理できてい中で書き出してしまったため、内容に分かりにくさがあったかもしれません。
そして、DS-ASDについて色々調べてみようと思いました。役立つことがあればこのブログで紹介したいと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。今後も役立つ情報などを発信していきますので、応援していただける方は、↓の応援クリックをしていただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。