ご覧いただきありがとうございます、うこうこです。
このブログでは以前より、特別児童扶養手当(通称:特児)制度の問題点を取り上げてきました。
その問題点とは、自治体ごとに認定される割合や却下率に大きな差がある=格差があるということです。
厚生労働省はその問題点を解消するために研究班に予算を当て、具体的な解消のための研究を行ってきています。
その研究の最初の一歩として、自治体の格差があるのかどうか?あるならどの程度なのか?をデータを収集して分析を行っています。
その結果がヤバすぎましたので、分かりやすくまとめていきたいと思います。
そして、次の記事では、格差解消に向けての取り組みをまとめます。2024年時点で、解消まで後一歩というところまで進展しています。その研究内容もかなり踏み込んだものになっていますので、よければそちらもご覧いただきたいと思います。
研究で分かった自治体間格差がヤバすぎた!
信州大学の本田秀夫先生と篠山(ささやま)大明先生を中心とした厚労省に委託された研究班が、全国の自治体に特児に関するアンケート調査を行いました。
その結果がヤバすぎました。以下のグラフを見てください。
令和2年度厚生労働科学研究費補助金 特別児童扶養手当の認定事務の適正化に向けた調査研究 特別児童扶養手当(知的障害・精神の障害用)認定の実態調査より一部改変し引用
これは、全国の自治体ごとの特児の申請数と、どれぐらい認められたのか?または却下されたのか?を示したグラフです。
横軸が各自治体を示しています。縦軸が特児の1級と2級が認められた数と認められなかった(非該当)数を示しています。
まず、ピンクの矢印を見てください。この自治体は申請すればほぼ100%認められています。
次に、紫の矢印を見てください。この自治体は、申請してもおおよそ半分以上の人が申請が却下されています。
驚くべきなのは、申請数がほぼ同じくらいの自治体でも、ほぼ100%認められる自治体もあれば、半分以上認められず却下されている自治体があるところです。
次に、データを詳細に分析をし、以下のことが分かりました。
- 特別児童扶養手当の認定率および申請される対象児童の平均 IQ/DQ には 自治体間で大きな差を認めた。
- 各自治体で申請される対象児童の平均 IQ/DQ にも地域差を認めることが明らかとなった(平均 IQ/DQ の 範囲:48.1-77.9)。
- 1級または2級と判定される割合は自治体間で差を認めた(自治体ごとの認定率の範囲:34-100%)。
分かりやすく言いますと
申請された子の知能や発達の状況は自治体でバラバラすぎ!
特児が認定された子の知能や発達の状況も自治体でバラバラすぎ!
具体的には…
- 申請された子の知能指数(IQ)や発達指数(DQ)の自治体ごとの平均は約48〜78と大きな差があった。
- 認定された子の知能指数(IQ)や発達指数(DQ)は約34〜100と大きな差があった。
そもそも申請する時点で、知能指数や発達指数において自治体でメチャクチャばらつきがあるというのがおかしな話です。
医者に相談したら「IQ(DQ)が50以上だと通らないよ。だから無理」と言われて診断書すら書いてくれなかった、という経験をしている方もいらっしゃいます。
また、IQ(DQ)が90や100といった知能や発達は平均レベルの子でも特児が認められている自治体もあります。これは、知能が高くても発達障がいの特性が強く、コミュニケーションや日常生活の困難さが大きいというケースなのだろうと思います。
そのような子でも制度上では支給の対象になるため問題はありません。
しかし、緩い自治体では『服薬はしているが知能は平均、学校は原級で大きな問題なく過ごしている』といった子でも申請したら認められたというケースもあります。
逆にこれは行き過ぎていると言えます。
この様な点に関連する内容として、研究結果からは以下のように述べられています。
申請される児童の IQ/DQ が低いために認定率が高くなっていると考えられる自治体がある一方で、認定率が高いが故に IQ/DQ が高い児童に対しても申請が行われていると考えられる自治体もある。
つまり、自治体ごとに明確な基準がないことで格差が慢性化しているということです。
これが特児制度の実態です。
明らかな自治体格差がある、に留まらず、その格差が深刻な状態にあるのです。
まとめ 実態の解明だけでは終わらない!
特別児童扶養手当制度は自治体による格差が存在し、その実態は慢性化しており格差は深刻である
ということがデータで示された以上、反論の余地はありません。
しかし、ここで終わりではありません!
本田先生と篠山先生たちが本当に凄いのは、実はココからなんです!
格差解消に向けて、研究を継続してきています。
その研究がまた凄いです!
発達障がいの児童精神科医として日本の最先端をいく、本田先生や篠山先生でないとできない研究内容となっています。
そして、その研究によって、特児の格差解消の実現まであと1歩のところまできています!
その内容については次の記事にまとめたいと思います。
是非、そちらもチェックしてみてください!
参考・引用
令和2年度厚生労働科学研究費補助金 特別児童扶養手当の認定事務の適正化に向けた調査研究 特別児童扶養手当(知的障害・精神の障害用)認定の実態調査 篠山大明・公家里依