ご覧いただきありがとうございます、うこうこです。
前回の記事で、ダウン症児の歩行獲得には伝い歩きの習得が重要である理由を解説し、その練習方法についてまとめました。
今回は、それらの練習の他に、伝い歩きの獲得に向けておーくんが取り組んだ工夫についてまとめてみます。
複数の理学療法士(PT)さんからいただいたアドバイスを参考に、工夫を加えて、より実践的な練習を行ないました。具体的な解説も加えてありますので、何かしらのヒントや役立つ点が得られるかもしれません。よければ最後まで見ていただけると嬉しいです。
おーくんが実際に取り組んだ方法と工夫について
おーくんは、つかまり立ちができるようになってから、伝い歩きで1歩を出すまでは割とスムーズにできました。ちょうどそのタイミングでリハビリでPTの先生に見てもらう機会があり、「成長を褒めてもらえるかな」と思って行ってみると、
「左側はよくい行くけど右側には全然行かないよね。足首も緩いし、脚の筋力をつけていくのも必要だね」
とのご指摘をいただき、「全然まだまだだったのかー」と少し落胆しました。
そこから、右側の伝い歩きの獲得と、脚の筋力強化を練習していくことになりました。
まずは得意な方向で感覚をつかむ
“体の筋力が弱く足首などの関節が緩い”のはダウン症あるあるですが、おーくんの場合は、全体的に脚の筋力が弱く、右足首が不安定な様子が目立ちました。そのため、重心移動をして体を支えられないため右側へ伝い歩きをしなかったのです。
そこで、まずは左側での伝い歩きを練習して感覚をつかむようにしました。触りたいものや玩具を左側に置いたりして練習しました。
左側が安定してきたところで、いざ右側の練習へ。最初はぐらつき反応を利用した方法を試して一歩が出せるように練習していきました。ぐらつき反応の利用については前回の記事にまとめてありますので、そちらも参考にしてみてください。
苦手方向を克服した工夫
ここから、苦手な方向への伝い歩きを克服した具体的な工夫について紹介します。
前回の記事で使った写真を見てください。
伝い歩きで推奨される高さ(腰ぐらいの位置)より、つかまっている位置が少し高くなっています。
肩から目線ぐらいの高いところに手を伸ばすことで、
- 移動する方向の足が上げやすくなるため、一歩の踏み出しが容易になる
- 体幹が少し上側に移動し、支えている足(移動する方向と逆側の足)に重心をしっかり残せるため、体全体が安定しやすくなる
といった体の反応が自然と起こります。その反応を上手に利用して練習することで、苦手な方向に伝い歩きがしやすくなります。
よって、“つかまる高さを少し高く設定してあげる”工夫を練習に取り入れると役立つかもしれません。
少し高いところのつかまり立ちは、一度不安定な姿勢になるとリカバリーしにくいため、転倒には十分注意して練習してください。
お風呂場は練習場所にもってこい!
“ダウン症児は水遊びが好きな子が多い”とよく聞きますので、お風呂場で興味を活かす方法も実践してみました。
玩具を取るために伝い歩く、蛇口から出ている水を触りたくて伝い歩く、ことを主にやっていました。
おーくんは、蛇口の水に興味をもっていたので、右方向に蛇口が来るようにして伝い歩きをしてもらっていました。
ちなみに、お風呂場の角を利用すれば方向転換の練習にもなります。
玩具など道具を使うとそちらの方に夢中になることが多く、お風呂場は滑りやすいので、大人がついて気をつけて練習してください。
脚の筋力強化のための工夫① 坂を登る!
おーくんの場合、動作の型を覚えることに加えて、足の筋力を鍛える必要がありました。具体的な方法については、病院や児童発達支援でのリハビリの先生にアドバイスをいただきながら、家庭でできることを実践していきました。
ジャングルジム遊具の坂を登る
登ったら、頭から滑る!
坂を登る動作は、足首や脚全体の筋力をつけるのに効果があります。
重要なポイントは、足先で踏ん張りを効かせているかどうかをチェックすることです。下の写真のように、足先で踏ん張りをきかせている使い方(左足)は良いですが、足先が外方向に向いている(右足)のは良くありません。
写真の右足のように足が外を向いてしまっているときは、大人が向きを正しい方向に修正してあげます。練習何度も正しい使い方を教えて練習していくと少しずつ上手になっていきます。
伝い歩きの練習と脚の筋力強化にはジャングルジム系玩具はおすすめです。スペースを取りますが折り畳めるものもありますので、良いなと思った方はチェックしてみてください。おーくんが使っている滑り台の高さを2段階調整できるものが練習には特におすすめです。
脚の筋力強化のための工夫② 立ち状態で床のものをつかむ!
つかまり立ちした状態で床のものをつかむ動作も脚の筋力強化やバランス感覚の強化に役立ちます。
お風呂場で、水をすくって遊ぶのも同じ動作になります。
すくう道具を別の手に持ち替えて練習するのも、左右バランス良く鍛えるためには良いです。
伝い歩きと併行して”歩く”練習
主に、伝い歩きは横方向への移動が中心になります。
ウィンダーズ先生の本の中には、
脚のステップの方法を教えるためには伝い歩きの練習と同時に、あなたが補助して前方へのステップも練習することをお勧めします。
ウィンダーズ先生のダウン症のある子どものための身体づくりガイド P198より引用
と、伝い歩きと併行して、前方への支え歩きを練習していくことが推奨されています。
前方への支え歩きを練習しよう
おーくんと外で支え歩きの練習をした様子を動画に撮ってきました。
大人が子どもの後方に立ち、肩の高さを超えないように両手を補助します。その状態で、重心を前方に向けたりしながら一歩一歩踏み出せるようにサポートします。
ポイントは、
- 短い距離で良いので毎日、何度も行うようにする。
- 慣れてきたら距離を伸ばしていく。
- 最初は上手に歩くことにこだわらなくて良い。
が挙げられます。持久力と忍耐力を鍛えていくと早い段階で歩けるようになるようです。
押しぐるまもおすすめ
押しぐるまを使って、前方へ歩く動作を身につける方法もおすすめです。
押しぐるまのメリットは、足を前方に出す動作を練習できる、前方移動の手応えを感じてモチベーションにつなげる、バランス感覚の弱さを補ってくれる、等があります。
写真で使っている玩具は、つかまり立ちの練習や押しぐるまとしての前方歩行の練習に加えて、手の操作性を向上する練習(つかんで入れる等)にも使えます。各発達段階における重要な遊びを可能にしてくれる発達を促す玩具としておすすめです。
まとめ
歩行動作の基本である伝い歩き獲得のためには、動作の習得のための練習と、筋力やバランスの強化を、毎日行なっていくことが重要です。
そのためには、モチベーションを引き出す関わりも重要です。ダウン症児にとって、歩行獲得のための練習はたくさん行う必要があるため、興味のあるものを上手く活用して、モチベーションを引き出して維持していく工夫が必要です。また、頑張ったときやできたときに褒めることも役立ちます。ことばだけで褒めるのではなく、表情や動きなどの非言語的な面も活用し、大人が喜ぶ姿をしっかり示してあげることが効果的です。
おーくんが取り組んだ工夫が少しでも何かの参考になれば嬉しいです。長文になりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
ジャングルジムが好きすぎて、力尽きるまで遊んだおーくん