ご覧いただきありがとうございます、うこうこです。
ASD(自閉スペクトラム症)がある子の支援で重要なのは、
なるべく早くから支援をすること
です。
個別療育を3歳以前から受けたASDの子は、そうでない子と比べて、コミュニケーションや情緒の安定、適応の向上などの効果が様々な研究で示されています。
そのため、ASDをなるべく早期に見分けて支援につなぐことが重要なのですが、
いつぐらいからASDかどうかを見分けることができるのでしょうか?
この”ASDかどうかを見分ける”ことについては、様々な研究が行われて科学的なエビデンスが蓄積されてきており、1歳6ヶ月〜2歳の段階である程度見分けることが可能といわれています。
そこで今回の記事では、2歳までに見られるASDの特徴についてまとめていきたいと思います。
2つの観点から特徴を見分けることが大切!
ASDかどうかを見分けるにあたり、2つの観点から整理していくことが大切です。
その2つの観点とは、
①ある段階までに通常はできるようになっていることができない
②通常の発達ではあまり見られない特徴が見られる
で、分かりやすくいうと以下のようになります。
①は「多くの子ができることができない」(あるべきものがない)
②は「多くの子には見られない特徴が見られる」(ないものがある)
①と②のどちらもある場合はASDの可能性が高くなります。
また、①か②のどちらかだけでもASDの可能性があります。
それでは、この2つの観点に沿って、ASDかどうかを見分けるポイントについて見ていきます。
①ある段階までに通常はできるようになっていることができない
これは1歳までと1歳6ヶ月までの2つの段階に分けられます。
以下の行動が見られない場合はASDである可能性が高くなります。
①-1 1歳を超えてもできないとASDの可能性が高くなる行動
- アイコンタクト(目が合うこと)をする
- 他の子へ関心を示す
- ほほえんだらほほえみ返す
- 名前を呼んだら反応する
- 人見知りをする
といった行動が見られないとASDの可能性が高くなります。
ASDの症状には程度があるため、『部分的にしかできない』ということにも気をつける必要があります。例えば
- 母親だけにはアイコンタクトするが、他人にはしない
- きょうだいには関心を示しているが、他人には関心を示さない
といった場合にはASDを疑うことがあります。
ASDの子でも「目が合う」子はそれなりにいます。「目が合わない」とASDの可能性は高くなりますが、「目が合う」からといってASDではないとは言い切れません。アイコンタクトをお母さんにはある程度している場合には、お母さん自身がアイコンタクトが乏しいことに気づいていないことが多く、他人に指摘されて初めて気づいたということもあります。
そして、ASDの子では、一見、他の子に関心を示しているように見えても、人そのものでなく、他の子が使っている玩具などの物や視覚情報(例:服の模様や色)に関心を示していたということも多いです。そのため、どのように他の子と関わっているのか?といった具体的なやりとりの様子を見ていく必要があります。
人見知りについては程度が重要で、『人見知りを全くしない』または『人見知りしすぎる(例:いつになっても慣れずに泣き続ける等)』のどちらの方向でも、ASDを疑うことがあります。
①-2 1歳6ヶ月を超えてもできないとASDの可能性が高くなる行動
- 興味を示す指さしをする
- 大人が指さししたときにその対象を見て、その後、大人の顔を見る
- 大人の視線の先にある対象を見て、その後、大人の顔を見る
- 興味のある物や自分が作った物など、見て欲しいものを大人に見せに持ってくる
- 大人の動作や言葉をマネする
といったことが、1歳6ヶ月を過ぎても見られない場合はASDの可能性が高くなります。
ここでの大きなポイントは、『他人と一緒に何らかの対象に注意を向けられるかどうか=共同注意』ができるかどうか?です。
例えば、指差しについては『興味の指さし』と『要求の指さし』の違いがあります。
『要求の指さし』は、『あれ食べたい』『それとって欲しい』など『〜して欲しい』の要求を叶えるための対象(お菓子、玩具など)を指さすことです。この要求の指さしはASDの子でもできることは多いです。
それに対して『興味の指さし』は、『カエルだ!見て』『ここにあった!見て』といったように、注意を共有するための指さしのことを言います。『見て』『見つけた』『ここにあるよ』なんかが代表的で、対象を指さしで知らせるだけでなく、知らせつつ大人の顔を見るまでできるかどうかが大切です。この大人と注意を共有する『興味の指さし』が、ASDの子は苦手な子が多いです。
そして、指さしという動作でなくても、大人の視線に気づいて、視線を向けている対象を見て共有する『視線追従』ができるかどうかも見分けるポイントになています。興味の指さしよりも高度になるため、これができないASDの子は多いです。
『見せたいものを持ってくる』のも、自分の興味や関心を大人と共有したいという姿勢の表れですが、ASDの子ではこの『共有する』姿勢が弱い子が多いです。
また、他人への関心の薄さゆえに、他人の動作や言葉をマネすることが難しい子が多いです。特に、動作のマネができない子が多いです。ここでいう”できない”というのは意識的にできないということではなく、”(多くの子は自然とやるのに)自然とやらない”ということです。”やらせたらできる”ではなく”自分から自然とやるかどうか”が重要なポイントです。
もうひとつ注意をしたいのが、言葉のマネについてですが、状況に合わせて正しい使い方でマネできているかを見る必要があります。ASDの子では、オウム返し(「ゴミは捨ててね」→「ゴミは捨ててね」のようにフレーズ全てを繰り返す)や、CM、動画、アニメなどのセリフ等の気に入ったフレーズを何度を繰り返し言うことは、ASDの特徴として多く見られます。どちらも、言葉のマネをしていますが、状況に合わせてコミュニケーションとして正しく使えてはいないの特徴です。
②通常の発達ではあまり見られない特徴が見られる
今度は逆に、通常発達ではあまり見られないけれど、ASDの子の多くに見られる特徴について見ていきます。
- 同じルーティンにこだわったり、思い通りにならない、想定外のことが起こると癇癪やパニックを起こす
- 抱っこを要求しない、抱っこを嫌がる、抱っこしても体を預けてこない
- 感覚的な遊びを繰り返す(物を落とす、口に入れる、触るなどの触覚だけの遊びを繰り返す、水を触る・眺めることに没頭する等)
- 音や触覚に過敏に反応する(多くの人は気にしない音に大泣きする、特定の音を嫌がる、特定の素材の服しか着たがらない、手をつなぐのを嫌がる等)、または鈍感である(傷や怪我をしても気づかない・痛がらない等)
- 極端な偏食(白いご飯しか食べない、野菜を一切食べない等)
- 安定した睡眠がとれない(少しの刺激で目覚める、誰かが接触していないと寝られない、夜泣きが激しい等)
ASDの子は「自分のペースが崩れると癇癪やパニックを起こしてしまう」ことは多くの子に当てはまります。ここでいうパニックには、動きのある「暴れてしまう」「ワーッと騒いでしまう」ということとは逆の方向に出る子もいて「フリーズして固まってしまう」もパニックに含まれます。専門家でも見逃してしまうことが多いので、その点は注意が必要です。
そして、感覚への没頭や、感じ方の独特さ(特異性)が見られることが多いのもASDの子に特有です。感覚の感じ方としては、敏感であることが注目されることが多いですが、鈍感であることもASDの特徴として挙げられます。
まとめ
今回は、2歳までの子どもみ見られるASDの特徴についてまとめて見ました。
ASDは、コミュニケーションや社会性が弱いことや興味関心の偏りがあることといった大枠の診断基準はありながらも、個々によって症状の広さや程度が異なります。
そのため、今回の特徴に当てはまるかどうかだけでは、ASDかどうかの完璧に見分けることはできません。
あくまでも、ASDの判断が必要な子なのか?を見分けるために活用できる情報というご理解をお願いします。
現在では、乳幼児健診の場などで、ASDかどうかのスクリーニングをおこなっているところが多いです。よく使われているものとして、ASDかどうかをスクリーニング(選別する)する検査でM−CHAT(エムチャット)というものもあります。研究によって科学的なエビデンスも示されているもので、インターネット上で調べれば検査項目が出てきますので、一般の方でもチェックすることができます。
MーCHATについて詳しく知りたい方はコチラの記事にまとめてあります↓
そして、M−CHATもあくまでスクリーニング検査であるので、やはり、診断の確定には医療機関での受診が必要になります。
ASDかどうかについては、医師の診察や、ASDかどうかを判断するためにエビデンスが認められた専門の検査を通して総合的に判断して診断名がついていくことになります。
参考・引用文献
神尾陽子ら(2018),最新医学別冊 診断と治療のABC130 発達障害,最新医学社