ご覧いただきありがとうございます、うこうこです。
以前、以下のような記事を書きました。
ダウン症の中には自閉スペクトラム症(ASD)を併存する人がいるという内容でした。
この記事について、いくつかinstagramでコメントやDMをいただき、普段の記事より多くの方に見ていただくことができました。それだけ多くの方が関心や悩みを抱えているのだと思います。
そこで今回は、ダウン症の人の中で、自閉スペクトラム症(以下ASD)も併せもつ人がどれくらいの割合でいるのかについてまとめてみたいと思います。
そもそもASDの人ってどのくらいの割合でいるの?
まず最初におさえておきたいのは、
ASDの人はどのくらいの割合でいるのか?です。
2000年代前半では、ASDのある人は、障がいのあるないに関わらず全体の人の中で100人に1人と言われていました。
それが最近になって「もう少し多いぞ」ということが分かってきました。
というのも、一定の地域で産まれた子どものほぼ全員を調査して、ASDの子どもがどれくらいいるのかを調べる研究というのが行われるようになってきたのです。
日本では、青森県の弘前市と長野県の岡谷市でそのような研究が行われました。
その結果、弘前市では5歳児の3.22%が、岡谷市では就学時点の子どもの3.1%がASDの診断を受けていました。
また、発達障がい分野では有名な本田秀夫先生(信州大学)の研究では、全国の診療データベースを用いて調査したところ、5歳児時点で約2.75%がASDの診断を受けていたことが分かりました。全国のデータとなると自治体ごとにかなりばらつきがあったことが指摘されていました。
以上のことから、少なくとも全体の約3%ほどの人にASDがあると考えられます。
そして、これらの研究はあくまで5歳付近での時点で診断された子どもの割合を示しているため、その年齢ではASDの特徴が目立たず、小学生や中学生になって診断される人もいますし、大人になって診断される人もいます。また、医療に繋がらない不登校や引きこもりの人の中にもASDの人が一定数いると言われていますので、実際にはASDの人の割合は3%より多いと言われています。
ダウン症の中で、ASDを併せもつ人はどれくらいいるのか?
それでは本題です。
ダウン症の人の中で、ダウン症とASDを併せもつ人(以下DS-ASD)はどれくらいいるのでしょうか?
DS-ASDについての海外の論文では以下のように書かれています。
DS-ASDはダウン症全体の16%である。
Richards C, Jones C, Groves L, Moss J, Oliver C. Prevalence of Autism Spectrum Disorder Phenomenology in Genetic Disorders: A Systematic Review and Meta-Analysis. Lancet Psychiatry. 2015;2(10):909-16.
ダウン症におけるASDの有病率は約20%である。
Versaci TM, Mattie LJ, Imming LJ. Down Syndrome and Autism Spectrum Disorder Dual Diagnosis: Important Considerations for Speech-Language Pathologists. Am J Speech Lang Pathol. 2021;30(1):34-46.
海外のダウン症やASDの専門家がDS-ASDについてまとめた専門書“When Down Syndrome and Autism Intersect “では以下のように書かれています。
ASDは非常に一般的な疾患であり,アメリカでは91人の子どものうち約1人がASDである。ダウン症の子どもがASDになる確率は約10倍であるが,その理由は今のところはっきりとはわかっていない。 ※おーくん父個人の和訳
つまり、ダウン症の9人に1人がDS-ASDであるとのことなので、ダウン症の約11%がDS-ASDであると指摘しています。
また、2023年に出版された『ダウン症のある子の赤ちゃんのころから「ことば」をはぐくむ』という書籍では、海外の研究結果を引用し以下のように書かれています。
(ダウン症の)7〜19%に自閉スペクトラム症が合併します。
以上から、
「ダウン症の人の中にはDS-ASDの人がおおよそ10%程度から多く見積もって20%程度いる」
と考えられると思われます。
ここまで海外中心のデータを見てきましたが、実は日本においてDS-ASDについての調査したデータはありません。公に調査・研究は行われていないようですし、そもそもDS-ASDの認識が専門職の間でも十分ではないのではないかと思われます。
まとめ
DS-ASDの人がどのくらいいるのか?
その割合を聞いて皆さんはどう感じたでしょうか?
めちゃくちゃ多い数値というわけではないですし、逆に、無視できるほど少ない数値でもないと思います。
少なくとも、一般の人と比べてダウン症の人はASDを合併する割合が高いことには変わりありません。
個人的には、この割合の高さはもっとダウン症の関わる人には理解されるべき数値だと思います。
それは、ASDが合併するとASDの特性に応じた関わりや支援が必ずと言って良いほど必要になるからです。もし適切な支援が受けられなければ、心理的な問題や行動の問題へとつながり、いわゆる2次障がいを引き起こす可能性も高くなります。
また、典型的なダウン症の子の発達の様相とは変わることも多く、親御さんがその違いに悩まれている方もいます。
そのため、今後もDS-ASDについて、いろいろな観点からこのブログではまとめていきたいと思いますので、関心のある方は今後も見にきていただけるとありがたいです。