うこうこまーく!
ダウン症おーくんの子育てブログ
ダウン症関連

“DSRD “について、心理師(士)であるおーくん父が率直な考えをまとめてみた!

ご覧いただきありがとうございます、うこうこです。

前回の記事ではダウン症“DSRD”についてまとめました。

今回の記事では、

DSRDについて心理師(士)であるおーくん父の率直な考えをまとめたいと思います。

DSRDの診断の難しさ

まず、DSRDの可能性が高いかどうかを判定する「チェックリストは実際に使えるのか?」ですが、

あくまでチェックリストであり、診断の参考程度として使われるものである

と考えます。

そもそも、DSRDにしか見られない症状というものはないのです。

チェックリストのほぼ全ての症状は、他の精神疾患でも説明できる症状です。

  • 獲得していたものができなくなる ⇨ 統合失調症の陰性症状
  • 食事や睡眠の異常 ⇨ うつ病性障害
  • 動作の減少や全く動かなくなる ⇨ 緊張病性のカタレプシー

また、❽精神に関する症状も全て既存の精神疾患の症状に当てはまります。

  • 妄想や幻覚 ⇨ 統合失調症の陽性症状
  • 並べる、何度も同じ行動を繰り返す ⇨ 強迫性障害の症状
  • 現実感の消失や離人感 ⇨PTSDの症状

そのため、DSRDか精神疾患かを見分けるのはめちゃくちゃ難しいと思います。

精神に関連する症状は、身体疾患と違って何らかの検査をしてその結果の数値だけで診断することはできません。

本人からの話(内容だけでなく話し方等も含めて)を聞くことが重要な情報になってきます。

しかし、ダウン症の方は軽度から中度の知的障がいがある方がほとんどですので、自分の状態を客観的に分かりやすく他人に伝えるのが難しい方が多いです。加えて、精神的な症状があると他人に会うことや話ができない状態になってしまいます。

よって、DSRDか精神疾患かの鑑別は大変難しいのです。

DSRDは本当に存在するのか?

以上のことを踏まえると、

  • DSRDという疾患自体が本当に存在するのか?
  • 実際は患者からの情報があまり得られないことで確定診断できない精神疾患なんじゃないか?

という疑問が出てきます。

その疑問に対して、個人的にはですが、

DSRDとされている方の中には実際は精神疾患によるものだという方が結構の割合でいる

と思っています。

実際に最近では、DSRDの患者を調べたら緊張病だったといった論文や、DSRDが過去のトラウマによるPTSD症状やストレス反応との関連が高いといった論文などが出ています。

Wang, S., Patel, L., Sannar, E. A., Khoshnood, M., Boyd, N. K., Mendez, L., … & Santoro, J. D. (2023). Adverse childhood experiences and the development of Down syndrome regression disorder. American Journal of Medical Genetics Part A191(7), 1769-1782.

Smith, J. R., Baldwin, I., Lim, S., & Luccarelli, J. (2024). Symptoms of Catatonia Observed in Down Syndrome Regressive Disorder: A Retrospective Analysis. Journal of Autism and Developmental Disorders, 1-7.

また、ダウン症は精神疾患になりにくいと言われることもありますが、科学的な根拠があるとはいえません。

ダウン症の方も精神疾患を発症しますし、器質的要因、ライフイベントのストレス、社会的なスキルの誤学習や未学習、トラウマといった心的外傷体験(の積み重ね)など様々な要因によって引き起こされると考えられます。

うこうこ
うこうこ
例えば、PTSDまでではなくても過去のトラウマの影響が青年期以降に精神症状として出てくる場合もあります。トラウマによる影響は最近になって議論される様になってきたテーマです。急激な退行は「トラウマ体験による解離性障がいとも重なるところがある」と愛知県医療療育総合センターの水野誠司医師も指摘しています(ダウン症のある成人の健康管理より)。

ただ、このような観点から青年期以降のダウン症の方の精神症状を診ることができる医師はかなり限られています。日本での論文も数は少なく、専門で研究している方もほとんどいないのではないかと思います。

精神疾患ではないDSRDをどう考えるか?

また、精神疾患で説明がつかない方も一定数いらっしゃると思います。

そのような方は、らかの免疫性の疾患である可能性があるのでないかと思っています。

この点は海外の研究で取り上げてられており、ダウン症の退行の記事の中でもまとめていますのでそちらを参考にしてください。

ダウン症の"退行" 4つのタイプと最新の研究で見えてきたことご覧いただきありがとうございます、うこうこです。 ダウン症の"退行" 成人期になったダウン症の人に起こる、今までできていたこ...

簡単にまとめると、“ダウン症に特有の遺伝子の何らかの異常があり(タンパク質の変異等)、それが免疫系に炎症を発生させ、しまいには退行症状を引き起こす”という説です。

この説については研究がまだまだ不足しているのが現状です。今後の研究展開に注目したいです。

まとめ

以上のことをまとめると、

  1. DSRDの症状のほとんどは精神疾患の症状でもあるが、鑑別はかなり難しい。
  2. そもそもダウン症の方への精神医学的な知見は充分とはいえず、診療できる医師もかなり少ない

①について、治療の第一選択は、精神疾患と同様、向精神薬による薬物療法になってくると思います。加えて、環境調整を図ったり、家族や支援者への間接的な支援が中心になると思います。そのように治療を進めていきながら経過の中で調整していくことになると思います。

そうなると、DSRDか精神疾患かの鑑別の重要性は低いかもしれません。

しかし、免疫性の疾患が原因である可能性が考えられるのであれば、精神疾患の症状なのか?免疫機能の異常なのか?を鑑別する視点は必要になってくると思います。

よって、DSRDという状態があることを多くの支援者(特に医療従事者や福祉領域の支援者)に知ってもらうことが大切だと思います。

精神疾患は放置したり適切な治療を行わないと悪化します。

「生活のストレスを取り除いてゆったり過ごせるようにしてください(=様子見)」と言われて、どんどん悪化してしまったなんていう事例は稀ではありません。

DSRDのチェックリストをつけてみて、気になる症状があれば精神科への相談を検討する必要があると思います。

また、子どもの頃からの発達の経過の中で、不安やこだわりが強い、感情の起伏が激しい、心的外傷体験(命にかかわらなくても複数のいじめ等も含む)がありその心理的影響が多少なりとも残っている、などの状態が見られる場合は、精神科への繋ぎやかかりつけ医を確保することを検討していくことも必要かもしれません。

それができるだけの医療体制の確保や、医師への周知は全くと言っていいほどできていませんが、少しでも進んでいくことを望んでいます。

最後までご覧いただきありがとうございました。今後も役立つ情報などを発信していきますので、応援していただける方は、↓の応援クリックをしていただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。
この記事を最後までご覧いただきありがとうございます。

少しでも面白かった、参考になったと感じていただけたら、バナーをクリックしてランキングの応援をして頂けないでしょうか?よろしくお願いします。

にほんブログ村 にほんブログ村へ

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA