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ダウン症児の体の発達において、大きな目標は“歩行の獲得”になります。
その歩行を獲得するまでには様々な動作を獲得していく必要がありますが、ダウン症児にとって特に重要とされる動作があります。
我らが、ウィンダーズ先生の本の記載では
ダウン症児が健常児とは違う方法で習得するスキルの1つが伝い歩きです。ダウン症児には、より早い段階から伝い歩きを教える必要があります。
ウィンダーズ先生のダウン症のある子どものための身体づくりガイド P195・197より一部改変し引用
と、“伝い歩き”が歩行獲得においてとても重要であることと、早い段階からの練習が必要であることが指摘されています。
今回は、なぜダウン症児にとって伝い歩きの練習が重要なのか?練習のポイントは?についてポイントをまとめます。
なぜ、伝い歩きを練習することが重要なのか?
伝い歩きは、歩行獲得のための足の使い方やバランス感覚を身につけるために必要な動作です。また、伝い歩きを基礎として、応用動作を身につけていきます(方向転換、前方への支え歩きなど)。それらの様々な歩き方を行うことで体幹や脚の力がついていきます。
ダウン症児への伝い歩きの習得について、ウィンダーズ先生は先程の本の中で以下のように述べています。
大事なのはステップ(脚を出すこと)へのやる気を引き出すことです。すでに習得した四つ這いを使いたがるので、赤ちゃんの歩きたいという意思表示を待っていてはだめです。歩く練習が遅れてしまうと四つ這いがもっと上手になってしまい、一人ではできない新しい歩くという移動方法にいっそう抵抗してしまいます。できるだけ早く慣れさせることで、移動の手段として受け入れやすくなります。
ウィンダーズ先生のダウン症のある子どものための身体づくりガイド P205より引用
つまり、ダウン症児には、適切なタイミングがきたら、子どものやる気を引き出つつ、歩くための基礎を練習を通して教えていく必要があると述べています。適切なタイミングとは”つかまり立ちが安定してできるようになったら”です。つかまり立ちができるようになったら、次の段階の伝い歩きを想定して少しずつ練習していく必要があります。
また、ダウン症児は、筋力の弱さや関節の緩さがあるため、正しい使い方で歩くことが難しいと言われています。そのため、歩行につながる動作は、自然と獲得することに任せるのではなく、正しい使い方をひとつひとつチェックし教えていく必要があります。その基礎が、伝い歩きに集約されているため、伝い歩きの獲得が重要とされているのです。
伝い歩きのポイントまとめ
伝い歩きの基本動作
伝い歩きは、大きく3つの動作に分解することができます。
①体幹を傾ける
→左右の移動したい方向に体幹を傾けていきます
②足を踏み出す
→踏み出さない方の脚を重心にしつつ、移動する方向の脚を横に踏み出します
③もう片方の足を寄せる
→踏み出した脚に重心を移し、もう片方の脚を寄せます
一番重要なのが、最初の一歩を踏み出すことなのですが、ダウン症児にはその難しさがあるため、工夫が必要になります。
筋緊張が低く靭帯が柔軟なダウン症児は、体重移動が難しく、脚が外側を向いていることが多く動かしにくい体の構造になってしまっています。よって、最初の一歩を踏み出すことが難しいため、ぐらつき反応を利用する戦略を使います。
ウィンダーズ先生のダウン症のある子どものための身体づくりガイドP195・196より一部改変し引用
体幹を傾けるのをサポートすることで、自然と一歩目の脚が出しやすくなる方法(ぐらつき反応の利用)を用いて練習すると良いと紹介されています。
もうひとつ重要なのが、③の”もう片方の脚を寄せること”です。残った方の足を寄せなければ重心移動の練習になりませんし、次の一歩が出しづらくなり次につながっていきません。難しいようなら大人が移動させてあげて動作を少しずつ覚えさせていくことも大切です。
その他の練習のポイントとしては以下の点が挙げられます。
- 玩具など興味があるものを手の届かないぐらいの位置に置くことで、一歩踏み出す動作を引き出す
- 1日に短い時間の練習を何度もする。
- 左右両側の伝い歩きができるかチェックする。まずは、得意な方向を練習し、十分に手応えを感じられたら苦手な方向を少しずつ練習していく。
伝い歩きとひとつとって見ても、動作習得のポイントや練習のポイントがたくさんあるのがわかります。少し大変ではありますが、一緒に練習する大人がポイントを知っておくことで正しく効率よく練習できますし、余裕を持って楽しく練習することにもつながります。
伝い歩きの応用
伝い歩きの動作を覚えて安定してきたら、歩き方のバリエーションを増やしていきます。
角の伝い歩き
テーブルの角など、角度を変えて伝い歩きをする練習です。
家具から家具への伝い歩き
ウィンダーズ先生の本でも、写真のように前後の家具の移動が載っていました。左右だけでなく、前後含めた重心移動を練習していくと良いです。
壁に手をついての伝い歩き
手や足の力に頼ることが難しくなるたり、体幹の力やバランス感覚が必要になります。それらを鍛えることにつながります。
以上の練習を通して、重心移動のバリエーションを経験することになり、体幹やバランス感覚の安定性を手に入れることにつながっていきます。
まとめ
- ダウン症児の歩行獲得には”伝い歩き”が重要なので、つかまり立ちが安定したら積極的に練習を始める
- ダウン症児の体の特徴を理解し、適した方法で練習する
- 左右、前方などの様々な伝い歩きの練習をして重心移動のコツを身につける
- できることから少しずつ、毎日何度も練習する
次回の記事では、今回まとめた練習に加えて、おーくんが実際に取り組んだ練習を紹介します。伝い歩きを向上させるために取り組んだ脚の筋力強化の方法もいくつか消化しますので、そちらも参考にしていただけたら嬉しいです。
最後までご覧いただきありがとうございました。