ご覧いただきありがとうございます、うこうこです。
以前の記事で、特別児童扶養手当の受給について、各都道府県ごとにデータを算出し、自治体による格差があるという記事を書きました。
この記事を書いたのが2021年9月5日ですが、その後に特児について幾つかのニュースが報道されました。今後を左右する大きな動きがありましたので、その経過をみていきたいと思います。
特児申請の却下数において大きな地域差が
2021年9月25日には、47NEWSにて「手当申請却下15倍増の怪 障害児の親「なんかおかしくない?」というニュースがあがりました。
このブログで扱ったものと同じデータを用いて、同様な分析と考察をされています。東京の異常なほどの受給者数の低さについて注目し、所得の差では説明がつかないと書かれています。さらに、横浜市の異常な申請却下数の増加について、行政担当者の曖昧な対応や判定医師の問題についても書かれており、地域差を浮き彫りにしながら特児制度の問題点について言及しています。締めくくりには、
判定は医師の「医学的判断」と言うものの、診断書を見ただけの判定医が障害児の日常生活の様子や、親の大変さをどこまで分かるのか。福祉職などを加えて複数の目で審査するなど、判定方法の見直しが必要だと思う。
と制度改定の必要性を訴えています。
ダウン症のある子を育てる親御さんのケースも載っていますので、気になる方は読んでみてください。
申請却下の大きな地域差も明らかに
2021年11月28日には、共同通信より「手当却下率に207倍の差 障害児向け、判定に開き」とのニュースがあがりました。以下に引用します。
特別児童扶養手当で、「障害が基準より軽い」として2020年度、申請を却下された人の割合に自治体間で最大207倍の差があることが、28日までに厚生労働省が発表した統計データで分かった。
同手当は都道府県と政令指定都市が判定事務を担っており、却下率が最も低い秋田県は0・3%だったが、最高の横浜市は207倍の62・2%だった。
同手当を巡っては、19年度までも自治体間の判定に大きな開きがあることが分かっており、審査を担う各自治体の判定医の個人差などが要因とみられる。
また、申請却下率3位の宮崎県は、却下率の増加について、
県は「審査基準に満たない発達障害児の申請が増えている」と説明。同年度に却下された申請のうち8割は、身体障害より判定が難しいとされる発達障害だった。
宮崎日日新聞より
と発達障害の子どもの申請が要因として説明しています。発達障害と診断される子どもは増えていますし、確かにその通りだと思います。しかし、それだけでは説明できないほどの却下率の差があることや、そもそもの審査基準が自治体によって様々であることには触れられていないことから、自治体によっては特児制度の曖昧さを把握できていない(判定医に委ねているだけ)ために、制度全体の問題点を理解していない可能性が考えられます。
そうすると、制度の問題点について報道されるようになり、多くの人に特児の制度やその問題点を知ってもらうことが、まずは重要なのだと思います。
現場で特児の発達検査に関わる立場として
私うこうこは、障害のある子どもを診療する医療機関で心理師として働いています。その中で、特児の診断書に記載する発達指数や知能指数を測定する検査を実施しています。また、面接している子どもの中には特児を受給している人が多くいます。
私が居住している自治体は、全国の中でも特児が受給しやすい方の自治体ですが、受給の判定が厳しい自治体の話を聞くと「自治体によって申請が通りやすい・通りにくい地域があり、地域差はある」と感じています。
知的に低くなく、生活もある程度自立してでき、同年代の集団の中でもそこそこ生活できている発達障害のある子が受給しているケースもあります。また、十分に受給対象と想定される子どもでも、特児について行政や医療従事者から提案されずにいたケースもあります。
また、医師、医療専門職、自治体職員でも特別児童扶養手当についてよく把握していないことがあるのが現状です。特児を扱う県の担当部署に診断書の形式や必要情報を問い合わせした専門職の方からの話では、必要な情報や形式についての解答は曖昧だったと感想を聞いたことがあります。
特児制度は、20歳以上になったときに障害年金に移行していくことを想定した制度であることを考えれば、「受給できていないのがおかしいケース」「受給しているのがおかしいケース」の双方が存在しており、判定に統一性がない現状を現場でも感じています。
この項での内容なあくまで個人的な感想になることをご承知おきください。大きな流れになってきているので少しでも参考になればとの思いで書かせていただきました。
厚生労働省による実態調査で「地域差がある」と裏付けられる
2021年9月27日の共同通信の「障害児手当の判定ばらつき裏付け 厚労省研究班、実態調査で」のニュースでは、厚生労働省の研究班が実態調査を行い、受給判定に地域差があったことを報告しています。
厚生労働省の研究班(代表・本田秀夫信州大教授)が27日までに、自治体によって判定にばらつきがあるとする実態調査の結果をまとめた。
厚労省の統計データからも地域差が判明していたが、改めて裏付けられた形。同手当は保護者が診断書などを提出し、47都道府県と20政令指定都市それぞれの判定医が支給の可否を判断している。研究班は、ばらつき是正に向け診断書の様式改定案を作成。判定の指針(ガイドライン)も作る必要があるとしている。
本田先生は発達障害分野では日本でもトップレベルの児童精神科医の先生です。その先生が中心となって実態調査を行ったところ、地域差があることを裏付ける結果になったとのことです。47都道府県と20政令指定都市で併せて67自治体があるのですが、協力を得られたのが40自治体ということで、協力を得られなかった自治体を含めると地域格差の実態はさらに根が深いのではないかと推察することもできます。
この調査と報告により、地域差の実態が裏付けられたことに加え、具体的な改訂の方向が示されたことは良いことだと思います。特児が受給できるかどうかは、“医師が診断書をどう書くか”と”自治体の判定医師がどう判断するか”に左右されるので、その双方にメスを入れていく方向の改定は、正しい方向性であると感じます。
まとめ
当ブログでも取り扱った「特児の地域差」でについて、メディアと国の調査の双方からその実態が明らかにされた経緯をまとめてみました。
これらは多くのネットニュースで配信されていることもあり、今後、関係者や当事者が声を上げていくことで、特別児童扶養手当制度の改定の方向に進んでいくのではないかと思います。現状のように大きな地域差があることは良いとは思えませんので、受給ができていない方にとっては良い知らせであると思います。個人的な思いとしては、不安な部分もあるのが正直なところですが、そのことについては別の記事でまとめてみたいと思っています。
今できることは、今後の動向に注目していくことと、多くの方に知っていただくことだと思います。この記事が少しでも何かの参考になればと思いますし、近くに関心のある方がいれば伝えていただけると嬉しいです。
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