ご覧いただきありがとうございます、うこうこです。
“発達検査や知能検査の結果の数値に振り回されないために”シリーズの最終回の第3回です。
第1回はコチラ↓
第2回はコチラ↓
第1回と2回を通して、検査結果の数値の魔力や、DQやIQの数値の意味についてまとめてきました。
最後となる今回は、“検査の限界”という観点から発達検査や知能検査について整理していくことで、子どもの理解を広い視点で考えることができるようになるということ解説します。
そうすれば、検査結果の数値に一喜一憂し、振り回されてしまうことを防ぐことができますし、子どもを広い視点でみることができれば、普段の関わりに活かすこともできます。
そして、その視点で得られた情報を支援者や関係者と共有することで、質の高い支援やアドバイスを受けることができると思います。
そんなふうに、少しでも役立つ内容になれば良いなぁーと思いながらまとめてみましたので、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。
発達検査や知能検査の限界について
今までに見てきました発達検査や知能検査は、子どもの理解にはとても役に立つ検査です。
新しい知見を取り入れなながらバージョンアップをしているものも多く、時代の様相に合わせながら進化していっています。
しかし、それらの検査は万能ではありません。
というのも、検査には“限界”があるからです。
知能検査の限界
知能検査の多くは、世界的に支持を得ている知能理論をもとに作られています。その知能理論では、知能を構成する要因は、大きく分けると10個の能力に分けられるとされています。
日本で一番使われているウェクスラー式の知能検査も、その知能理論をもとに作成されています。しかし、知能の10個の能力を全てを測定できているわけではありません。おおよそ半分程度の能力は測定できていますが、測定できていない能力もあるのです。
つまり、ウェクスラー式の知能検査は、統計的にデータ分析を行える客観性の高い検査ですが、知能の全てを測定できる万能の検査ではないということです。
発達検査の限界
発達検査でも同じような視点で考えることができます。
子どもの発達の側面は多様です。運動の発達、ことばの発達、目で見る力の発達、手を動かす力の発達…などなど、多くの発達の領域があります。そして、そのひとつの領域をとっても見たときにも、発達の要素がたくさん存在しています。
例えば、ことばの発達といっても、ことばを理解する力と、ことばを使う力で分かれます。また、ことばを理解する力についても、耳で聞いて理解する力や文字を読んで理解する力などに分けられます。別の観点として、ことば自体の力も、語い力、概念理解の力、文法理解力などに分けられます。
といった感じに、発達の要素は非常に細かい要素に分けられるのと、見る観点によって分け方が異なってくるのです。
しかし、発達検査は、全ての領域の発達と、全ての要素を測定できるわけではありません。
なるべく発達の全体を捉えるように作られている検査が多いですが、細かい要素の全てはカバーできないので、特に重要なポイントを評価する形式になっているものが多いです。
つまり、発達検査においても、測定できる発達の要素は限られていて全てをカバーしているわけではない、ということです。
発達検査や知能検査で測定できるのは、子どもを理解するうえで重要な観点のひとつでしかない
発達検査や知能検査で測定できるのは、主にその子が獲得している“能力”です
しかし、”能力”の観点以外にも、子どもを理解するうえで重要な観点はたくさんあります。
そのような力を総合的に見ていくことが、子どもを理解するうえではとても重要になります。
子どもを理解するうえで重要な4つの観点を解説!
子どもを理解するうえで重要な側面として、ここでは大きく4つの側面を取り上げます。下の図を見てください。
発達検査や知能検査で測定される数値は、主に、子どもの能力がどのくらい獲得されているのか?を示しています。これは、子どもの『能力』の側面といえます。
そのような『能力』は子どもの内にあるものですが、内にある別の側面として、子どもの『特性』という側面があります。「穏やか」「活発」「他者に優しい」といった子どもの“性格”もここに入ります。また、衝動性や不注意の強さ、こだわりの強さ、聴覚・味覚・触覚などの感覚の過敏さや鈍感さ、といった“発達特性”といわれる観点もここに入ってきます。発達の特性というものは誰もが何かしら持っているものですが、それが強すぎて生活への影響が大きい場合に、発達障がいの診断がつくことになります。
『能力』や『特性』という子どもの内なる側面に対して、外的な環境に働きかける力がどのくらい獲得されているのか?をみる側面が『適応』と『自立』です。
『適応』というのは、置かれた環境に合わせて行動や活動がどの程度できるのか?という側面です。例えば、
- 保育園や幼稚園、学校などの集団生活の中で周りと一緒に行動や活動がどの程度できるか?
- 人との関わり方がどの程度適切にできるか?
- コミュニケーションがどの程度適切に取れるか?
- 余暇を楽しむことがどの程度できるか?
といったポイントがあります。『適応』の側面で大切なのは、「能力的にはできるだろう」ではなくて「実際にやれているかどうか?」を評価します。『能力』は、発揮できていなくても力があれば「能力はある」という評価をしますが、『適応』は”本気出せばできるけど普段はやっていない”ことは適応の力としてはカウントしません。“実際にできていること”を評価するところが『能力』とは異なるポイントです。
『自立』というのは、身の回りのことが自分でできるかどうか?という側面です。着替え、食事、排泄、整理整頓、準備などが自分でどの程度までできるのか?を評価します。『能力』が高くても身の回りのことができない人もいれば、逆に、『能力』が低くても身の回りのことはある程度しっかりできるという人もいます。
以上、子どもを総合的に理解していくための4つの側面について解説しました。
子どもの内なる力である『能力』と『特性』と、外的な環境に働きかける力で実際に発揮できているものとしての『適応』と『自立』が子どもの理解には重要な側面です。
心理師の領域では、下記のような感じで心理検査を実施することがあります。
- 『能力』→発達検査、知能検査
- 『特性』→性格検査、発達特性(障がい)に関わる検査
- 『適応』→適応行動を測定する検査
- 『自立』→適応行動を測定する検査に含まれることが多い
まとめ 〜刷り込まれた認識に囚われないために〜
『能力』が高いとなんでもできて、低いと何もできない」というイメージを持っている方は多いのではないでしょうか?
そのために、検査結果の数値を過度に受け止め一喜一憂してしまうのだと思います。
しかし、その考えはあまりに極端すぎます。
だからこそ、今回まとめたように、”子どもを理解するには色々な側面がある”ということを少しでも理解しておいてもらいたいのです。
そして、検査結果に振り回されないためには、
数値の意味を知ること。
そして、
分かったつもりにならず質問すること。
The Greatest enemy of knowledge is not ignorance, it is the illusion of knowledge.
知識に対する最大の敵は無知ではない。知っているという錯覚である。
スティーヴン・ホーキング博士
「分かったつもり」にさせる数値の魔力にとらわれないために数字の意味を知っておくこと、そして、疑問や不安な点については質問して相談していくことが大切です。
専門家に聞くのは勇気が必要かもしれませんが、良い専門家であればきちんと分かりやすく説明してくれます。それが専門家の責務だからです。
あとがき
全3回のシリーズでしたが、それぞれが長文で難しい内容だったと思います。
それでも最後まで読んでいただきありがとうございました!
普段の仕事の中で、重要だと考えている視点について、お子さんが検査を受ける保護者の方に伝えたいことを書き殴った感じになるので、読みにくいところが多々あったかと思います。
子どもの発達のこと、子育てや関わり方のことなど、検査やカウンセリングのことなど、障がいのある子どもを育てる親御さんに役立つテーマを今後もまとめていきたいと思いますので、
こういうところが知りたい!
これはどうなっているのか?
ということがあれば教えていただけるとありがたいです!
InstagramやのコメントやDMに気軽に書いていただければ嬉しいです。
それでは、長いシリーズを最後までお付き合いいただき、
ありがとうございました!
最後までご覧いただきありがとうございました。今後も役立つ情報などを発信していきますので、応援していただける方は、↓の応援クリックをしていただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。