※今回の記事と同様な内容をより詳しく解説した動画をYouTubeにアップしています。実際の練習の様子を動画で見ることができますので、そちらも参考にしてみてください。
ご覧いただきありがとうございます、うこうこです。
ダウン症の子育てにおいて、多くの親御さんが気になるポイントの一つは「いつ歩けるようになるのか?」ではないかと思います。
ダウン症の子どもは、筋力や筋緊張が弱いため、運動発達が遅れる傾向にあるといわれています。うちのおーくんも、おっぱいが上手く飲めず入院することになったぐらい、生まれてから全身の筋力はとても弱かったです。
そのため、小さい頃から、運動の発達には気を使い、色々な書籍や文献を参考にしつつ、理学療法士さんと相談しながら、普段の生活の中で練習してきていました。
そして、1歳6ヶ月には歩くことができるようになりました。
今回の記事では、“歩行の獲得に向けて、おーくんがどんなことを意識して取り組んできたのか”について紹介したいと思います。おーくん独自の方法もありますが、ほとんどが専門家の意見や論文の知見を参考にしたものになっています。そのため、多くの方に参考になると思いますので、最後まで見ていただけたら嬉しいです。
ダウン症の歩行獲得について理解する
最初に、ダウン症の子どもの歩行獲得について、確認しておきたいと思います。
古い研究ですが、池田(1978)では、ダウン症の子どもが歩けるようになるのは、平均して25.8ヶ月と報告されています。現在では、早期療育を受けることができる体制も整ってきていることもあり、おおよそ、平均的に2歳ぐらいと言われることが多いようです。
しかし、海外の研究では、健常の子と比べて、ダウン症の子どもは、歩けるようになる年齢の個人差が大きいことが指摘されています。1歳の時には歩くことができている子もいれば、3歳を超えてやっと歩けるようになる子もいて、その差が大きいということになります。つまり、平均の値を目標としての基準に設定するには注意が必要といえます。
また、ダウン症の子どもにとって、”早く歩けるようになる以上に、正しい歩き方で歩けること”が重要です。もともと、筋緊張や筋力が弱いことが多く、上手く体が使えず、負担の大きい歩き方をしてしまうことや、扁平足になりやすい傾向にあるため、正しい体の使い方を覚えていくことがとても重要になります。
以上のことから、早く歩けるようになることが必ずしも良いことではなく、その子どもの個々の発達に合わせた支援を行っていくことや、正しい歩き方をしっかりと獲得すること、がダウン症の子どもにとっては重要である、ということを抑えておく必要があります。
「適切なタイミングで、その子に合った関わりや支援をしてあげること」が歩行に限らずダウン症の子の発達では重要だと思います。
歩行獲得のためにできること
今までの基本を確認した上で、歩行獲得のためにできることを考えていきたいと思います。
まず、「いつ頃から歩くことを意識して練習していくと良いのか?」についてです。
結論は、「つかまり立ちをするようになったら」です。
つかまり立ちをするようになったタイミングで、伝い歩きの練習と並行して、前方へ歩く練習をしていきます。
このことは「ウィンダーズ先生のダウン症のある子どものための身体づくりガイド」に詳しく記載されています。
そのウィンダーズ先生は、
歩く練習が遅れると四つ這いに慣れすぎてしまい、最初は一人でできない、歩くという動作に、いっそう抵抗するようになってしまうため、できるだけ早く歩く練習をする方が良い。
と指摘されています。そして、短い距離から、1日に何度も歩くことで、なるべく健常の子が歩く距離に近づけるように練習をすることを推奨しています。
「ダウン症の子は発達がゆっくりだから焦らずにいきましょう」と言われることが多いため、練習をさせずにいるとより歩行獲得が遅くなってしまうため、つかまり立ちができるようになったら、歩行のための練習を考えていくことがとても重要です。
ちなみに、おーくんも、つかまり立ちができるようになったタイミングで、通院先でのリハビリでは伝い歩きと支え歩きの練習を始めていました。
でも、おーくんは、伝い歩きも最初はうまくいかず、練習に工夫が必要でした。そのため、まず、伝い歩きを練習して、左右両方への体重移動が何となくできるようになってきたタイミングで、歩く練習を本格的にスタートしました。
伝い歩きに関してどのように取り組んだのか、については、コチラの記事で詳しくまとめてあります。よければそちらを参照してください。
歩くようになるまでにおーくんが実際に取り組んだこと
おーくんが、歩行を獲得するまで、実際にどんなことを取り組んだのか、について具体的にみていきます。
大きく、2つのポイントがあります。それは
①ひたすら歩く
②筋力を鍛える
です。それぞれについて詳しく見ていきます。
①ひたすら歩く
一つ目のポイントは、ひたすら歩く、ですが、これはそのまんまの意味で、できる限りたくさん歩く、ということです。
と言っても、最初から一人で歩くのは無理なので、最初は、両手を支えて歩く練習をします。大人が後方に立ち、子どもの肩の高さを超えないように両手を掴む形で、練習をしていきます。
支え歩きの練習は、本人が嫌がらなければ、ひたすら練習していました。なるべく、楽しみながら、「あそこのおもちゃとりいくぞー」とか、「ママを追いかけるぞー」とか「お姉ちゃんから逃げろー」とか、楽しみながら練習するのがポイントです。
あと、できる子は、座った姿勢から大人が手を掴んであげて、「よっこいしょ」と立つところから練習するのもお薦めです。これは、手の力の訓練にもなります。
両手での支え歩きになれてきたら、片手での支え歩きに挑戦していきます。片手での支えができるようになると、かなり体幹が安定してきているため、歩行獲得までかなり近づいてきていると考えられます。
以上の支え歩きに加えて、手押し車を使った歩行の練習もしていました。先ほどのウィンダーズ先生の本でも歩行練習のひとつの方法として紹介されています。
②筋力を鍛える
次に、2つ目のポイントは、筋力を鍛える、です。
歩くことにつながる筋力としては、足の筋力と体幹を保つバランスの力が必要になります。そしてもうひとつ、ダウン症の子にとって鍛える必要がある力があります。それは、手の筋力、特に、握力です。
数々の研究から、ダウン症の人は手の力や握力が弱いことが指摘されています。しかし、手の力や握力は、全身の筋力と関連し、特に幼児の場合は、噛む力や状態を支える力に関連することが分かっています。
詳しくはコチラ⇩
つまり、歩行には、手の力や握力が重要であり、特にダウン症の子が歩行獲得を目指すにあたって、足や体幹の力だけでなく、手の力、特に握力も同時に鍛える必要がある、と考えられます。
そのことを考慮しつつ、おーくんが取り組んだ方法を見ていきます。
専門家が推奨する筋力の鍛え方
道具が必要になりますがとても効果が期待できる方法です。それが、坂道登りと鉄棒ぶら下がりです。
坂道登りとは、坂道や滑り台を下から上に登っていく方法です。
手で掴む、足で踏ん張る、ことで体の体重を支えるため、手足の筋力を鍛えることができます。
おーくんの場合は、家庭用のジャングルジムの玩具を使って、坂道登りの練習をしていました。
次に、鉄棒ぶら下がりですが、大人が子どもの体を支えながら子どもに棒を掴んでもらい、ぶら下がるという方法です。
鉄棒でなくても、子どもの体重が支えられる棒なら他のものでも代用できます。この方法では、腕から肩にかけての筋力や握力をつけることができ、また背骨の歪みの矯正の効果もあるようです。床にはクッションをしっかりと敷き、最初は大人が体を支えて練習していくようにしてください。
おーくんは、先ほど紹介したジャングルジムについていた鉄棒でぶら下がりの練習をしていました。この玩具、スペースを取られてしまうので微妙かなぁと思っていましたが、伝い歩きから歩行獲得まで、幅広く活躍してくれました。
この二つの方法は、臨床遺伝専門医で長年ダウン症を診療してこられた、長谷川先生が、「ダウン症神話から自由になれば子育てをもっと楽しめる」の著書の中で、握力を鍛えるおすすめの方法として紹介されています。
筋力を鍛えるその他の方法
まずは、つかまり立ちの状態で、手を動かしたりしながら遊ぶことで、足の力やバランス力を鍛えることができます。例えば、つかまり立ちをしながらボールを掴んで入れる遊びがあります。
また、大人とやりとりを楽しみながら練習する方法としては、手押し体操があります。
これは大人とやりとりをしながら練習するため、子どもにとっては楽しみやすいかもしれません。最初は、大人がリードして押したり引いたりしていきます。何度も繰り返しやっていくと、大人が押したり引いたりした後に、子どもが力を入れる様子が出てきます。「おっ!力が入ったかも」と感覚としてわかるようになってきますので、力が入るのを確認しながら、押したり引いたりと練習していくようにします。
※文面からはわかりにくいかもしれません。実際の様子をご覧になりたい方は動画版の11:35〜を見てください。
さらに、純粋に手の力を鍛える方法としては、(道具を使わない)手押し車があります。
まずは、姿勢をとることから始め、少し揺さぶったりしながらやりとりを楽しむところから始めていきます。もう一人、大人がいれば、お子さんの顔を覗きこみながら「いないいないばぁ」なんかをしても楽しいかもしれません。そして、慣れてきて筋力がついてくれば、手を出しながら前進することもできるようになっていきます。ただ、腕に負担が結構かかるので、無理せず少しずつやっていくのが良いと思います。
これらの練習は、歩くことと同じように、遊びの中で、楽しみながら行うことが何より大切です。
まとめ
ダウン症の子の歩行獲得については、適切なタイミングで、しっかりと練習していくことが重要です。
適切なタイミングとは、つかまり立ちができるようになった段階から考えていく必要があります。健常の子どもは、大人が意識して練習をしなくても、自然の発達の中で歩行を獲得することがほとんどですが、ダウン症の子については、しっかりとした練習が必要になりますし、正しい姿勢で歩けるようになることも意識していく必要があります。
そして、歩く練習に加えて、筋力の強化も必要です。それも足や体幹だけじゃなく、手の力についても鍛えていく必要があります。
そのような理解のもとに、実際におーくんが取り組んだ具体的な方法について紹介させていただきました。お子さんの性格、能力、体の調子、生活環境によってはさまざまな工夫があると思いますので、「うちはこんなふうに意識しました」とか、「こんな遊びが役に立ちました」といったことがあれば教えていただけると嬉しいです。
最後までご覧いただきありがとうございました。今後も役立つ情報などを発信していきますので、応援していただける方は、↓の応援クリックをしていただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。